永田町にも欲しい? 賄賂を見分ける新アプリ
腐敗が蔓延するインドネシアで、汚職をめぐる意識改革を起こす「秘密兵器」が登場
これって賄賂? 昨年秋に発表されたスマホ用の汚職撲滅ゲーム Komisi Pemberantasan Korupsi-KPK
あなたは政府機関で働く公務員で、コンピューターの購入を担当している。いくつかのメーカーに入札を呼び掛けると、ある会社の営業担当者が「このたびはお世話になります」と、人気ブランドの最新型ノートパソコンを持ってきた。悪い人じゃなさそうだし、取りあえずもらっておこうか......。
すると突然、画面上にロボットが現れ、「この件が公になってもいいか」と尋ねてきた。「ノー」と答えると、ロボットは不機嫌そうに「誠実さを失ってはならない」と告げた。
画面上? そう、これは汚職撲滅を目指すインドネシア当局が作成したスマートフォン向けゲームアプリの一コマだ。
インドネシアでは、業務上の見返りを期待して金品を贈ったり、それを受け取ったりする行為が贈収賄という犯罪であるという認識が十分浸透していない。国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナルが発表している「腐敗認識指数」は、175カ国中107位。
「公共事業の受注や営業免許の許認可をめぐって汚職が蔓延している」と、同団体のジャカルタ支部のワヒュディは語る。賄賂を贈らずに事業を立ち上げることはほぼ不可能で、公務員や政治家の側から金品を要求するケースも多い。
そこで、汚職の捜査・起訴を担う汚職撲滅委員会(KPK)は昨年秋、贈賄に関する学習アプリを発表。テーマパークを舞台としたこのアプリは、クイズやグラフを駆使して、どんな贈り物が賄賂に当たるのかを啓蒙する内容となっている。「贈り主を捕まえろ」と題されたゲームや、賄賂かもしれないプレゼントを受け取るべきか否かを判断するゲームもある。
クリーンな現政権が主導
このアプリがもっと早く世に出ていれば、スマトラ島リアウ州のアナス・マアムン知事が罪を犯すこともなかったかもしれない。彼は森林の開発許可と引き換えにパーム油製造企業から20億ルピア(16万6000ドル)を受け取った容疑で、昨年9月にKPKに逮捕された(わずか半年前に、前任者が似たような罪で懲役14年の判決を受けているのだが)。
大統領直轄の組織として主に大物政治家の不正を糾弾してきたKPKは、国民から圧倒的な支持を得ている。02年の設立以来、逮捕者は既に400人近く。昨年5月には、メッカ巡礼の公的資金を不正流用した容疑で宗教相を告発し、9月にはエネルギー相を横領などの容疑で捜査すると発表した。