最新記事

人権問題

ドイツに登場、ネオナチと闘うアプリ

極右デモの予定が表示される地図アプリが反差別運動の強い味方に

2015年1月7日(水)15時21分
アンジェラ・ウォーターズ

不穏な空気 移民やイスラム系の排斥を呼び掛けるデモがドイツで拡大している Hannibal Hanschke-Reuters

 中東からの難民やイスラム系住民の排斥を呼び掛けるデモが全国的に拡大するドイツで、「ネオナチと闘うアプリ」が登場した。

 その名も「ゲーゲン・ナチス(反ナチス)」というこの無料アプリは、マップ機能を使って極右デモやそれに対する抗議デモに関する情報を表示する。いつ、どこでこうしたデモが行われるか、すぐにわかる。

「排斥デモへの抗議行動の予定も告知されるので、難民との協調や人種差別反対、ユダヤ人差別反対への活動に参加しやすくなる」と、人権グループ「ベルリン・アゲインスト・ナチス」のジェシカ・ゼラーは言う。

 グループはベルリンの市当局や民主団体と協力し、ツイッターやフェイスブック、ウェブサイトから情報を集めて、アプリで極右デモや抗議行動の予定順路を描き出す。

 アドルフ・ヒトラーが着ていた茶色のシャツにちなんで、極右デモは茶色く表示される。一方の反ナチ活動はオレンジで表示される。新しい情報が入れば、即座にユーザーに通知が届いて知らせるしくみだ。

 アプリの最大のターゲットは、ドイツ最大のネオナチ組織で極右政党の「ドイツ国家民主党」。東部のメクレンブルク=フォアポンメルン州では州議会に5人の議員を送り出している。

「ゲーゲン・ナチ」が注目するもう1つのターゲットは、「ペギーダ」という名称で知られるグループ「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」。東部の都市ドレスデンで毎週開催されるデモへの参加者が最近、急増している。昨年末に実施された「反イスラム化」集会には、警察の調べで過去最多の1万7500人が参加した。

「ペギーダ」支持層の中核は右翼活動家と見られるが、最近では強い政治信条を持たない一般人のデモ参加も増え始めている。中東からの難民の大量流入や西洋の「イスラム化」への危機感を覚えるドイツ人が増えているのだ。

 昨年ドイツには過去最多の20万人が難民として入国し、亡命申請する見込みだ。前年より154%増加している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済のリスクは新政権の政策次第、関税は詳細確認が

ワールド

バルト海経由のロシア産石油輸出10%減、EU制裁で

ビジネス

午前のドルは155円前半へ下落、米大統領発言で上下

ワールド

トランプ氏との面会、最も適切な時期ということで詰め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブーイングと擁護の声...「PR目的」「キャサリン妃なら非難されない」
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    台湾侵攻にうってつけのバージ(艀)建造が露見、「…
  • 10
    身元特定を避け「顔の近くに手榴弾を...」北朝鮮兵士…
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中