最新記事

イスラム過激派

アルカイダは「ISISを容認せず」

アルカイダ系で最大の組織の指導者が、斬首の撮影と拡散は邪道とISISを非難したが

2014年12月19日(金)12時07分
アレッサンドリア・マシ

残虐非道 「イスラム国」の樹立を記念してパレードをするISIS(シリア北部) Reuters

 イエメンを拠点とするアルカイダ系武装組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が、スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)と一線を画そうとしている。ISISの斬首ビデオを「野蛮だ」と非難し、アルカイダの戦略こそアメリカを倒す唯一の聖戦だとうたっているのだ。

 AQAPの指揮官ナスル・イブン・アリ・アルアンシは先週、ネット動画を通じて「初の国際的な記者会見」を行った。「イスラムと聖戦の名において斬首を撮影し、映像を広めることは大きな間違いであり、容認できない」とISISを糾弾したアルアンシ。その上で、ISISはアメリカとの戦いにおいて集中力を欠いていると批判した。

 2つのグループはアメリカと戦うという同じ目標を掲げているが、持続可能な戦略を持っているのはアルカイダだとアルアンシは述べた。AQAPは以前から、ISISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディが自身を預言者ムハンマドの後継者たるカリフ(最高権威者)だと宣言したことについて、正当性を欠くと非難。世界のイスラム過激派内に分裂をもたらしたと訴えてきた。

「われわれのイスラムの教えの説き方はISISとは異なる」とアルアンシは語る。彼に言わせれば、AQAPの指揮官たちは恐怖で支配しようとしていないため、戦闘員の団結力が強い。

 皮肉にも、アルカイダはアメリカ人ジャーナリストの斬首処刑の動画を流した最初のテロ組織だ。ウォール・ストリート・ジャーナルの記者ダニエル・パールのおぞましい殺害映像は02年に公開された。

 AQAPは世界に散らばるアルカイダ系組織の中で最大規模であり、アメリカにとって最も深刻な脅威とみられている。「記者会見」は、今月初めに米軍がAQAPに拘束されている人質の救出作戦を遂行する前に撮影された。作戦は失敗に終わり、AQAPは人質2人を射殺した。人質を取っては殺す非道性は、アルカイダもISISも変わりないのだが。

© 2014, Slate

[2014年12月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中