西アフリカのエボラ支援で中国がはじくソロバン
エボラ出血熱の悲劇が浮き彫りにする対外支援と貿易の切っても切れない関係
大感染 エボラ出血熱の猛威がアフリカの新興経済を脅かす John Moore/Getty Images
西アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱は、既に2100人以上の命を奪っている(注:本誌発売時点)。この悲劇が皮肉にも、中国がアフリカで汚名を返上する機会になるかもしれない。NGOや各国政府からの支援の輪に、中国も加わることになったのだ。
だが、支援を受ける側は複雑な感情を抱えている。エボラ熱の拡大がとりわけ深刻なリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国に、中国は10年も前から巨額の援助や資本を投じてきたが、そこでは純粋な援助や投資以外の思惑が透けて見えたからだ。
「アフリカでは、中国企業は矛盾する存在だ」と、南アフリカ倫理研究所のリポートは指摘している。「親切な投資家でアフリカの友人だと歓迎される一方で、自分たちの利益ばかりでアフリカにほとんど見返りをもたらさない『新しい帝国主義者』とも思われている」
中国国営メディアによれば今回中国は、感染拡大が深刻な地域に対し5月初旬に16万ドル相当、8月上旬に490万ドル相当の支援物資を送った。またリベリア、シエラレオネ、ギニアには中国籍の滞在者が2万人以上いることも伝えられた。
数日後には、中国疾病管理予防センターからこれら3カ国に9人の専門家を派遣すると発表。現地の医療スタッフの訓練にも当たる。中国中央電視台によると、公衆衛生上の危機で中国が外国で人道援助に携わるのは初めてだという。
動機はともあれ、今はとにかく支援が必要だ。「国際社会の結束が試されている」と、ヤン・エリアソン国連副事務総長は言う。
中国は09年にアメリカを抜いて、アフリカの最大の貿易相手国に躍進した。11年のアフリカからの輸入は80%以上が、原油などの天然資源だ。
「今後もアフリカへの支援を、質的にも量的にも可能な限り増やしていく。中国の対外支援の半分以上がアフリカに向けられることになるだろう」と、中国の李克強(リー・コーチアン)首相は5月の世界経済フォーラム・アフリカ会議で語っている。