最新記事

ワールドカップ

ブラジル人はこの屈辱を忘れない

W杯準決勝でドイツに叩きのめされたサッカー王国の絶望

2014年7月10日(木)14時47分
アルベルト・リバ

ミネイロンの悲劇 涙を流すブラジルサポーター Ueslei Marcelino-Reuters

 ワールドカップ(W杯)準決勝における7-1というスコアは、現代サッカーの常識からいってあり得ない数字だ。しかも屈辱的な敗退を喫したのは、W杯史上最多となる5回の優勝経験をもつブラジル。そんなあり得ない事態が、7月8日(現地時間)の対ドイツ戦で現実になった。

 6分間に立て続けに4点を奪われ、前半を終えた時点で5-0という展開に、ブラジルメディアは怒り狂った。有力紙フォーリャ・デ・サンパウロの電子版はハーフタイムに、「ドイツが5点、ブラジルを大虐殺」と題した記事を掲載。「ブラジルの恥」という見出しを掲げた日刊紙もある。

 国民の失望は計り知れない。試合終了後には各地で略奪や小競り合いが発生し、サンパウロではバス20台が放火される騒ぎも起きた。

 ブラジル代表チームの選手たちには今後、想像を絶するような厳しい非難の嵐が浴びせられるだろう。自国開催のW杯の大舞台で完膚なきまでに打ちのめされたことで、サッカー王国のプライドはズタズタに傷つけられている。

 ブラジル代表チームは、同じく自国開催だった1950年のW杯での「マラカナンの悲劇」を乗り越えるという大きな使命を背負って、今大会を戦っていた。当時、リオデジャネイロのマラカナン・スタジアムで行われた決勝でブラジルはウルグアイに逆転負けを喫し、W杯優勝を逃したのだ。あのときの悲しみを、ブラジル国民は今も忘れていない。

 だが今回の歴史的大敗に比べれば、マラカナンの悲劇など取るに足らないものに思える。1試合で7失点したこと、それが準決勝だったこと、満員のサポーターで埋め尽くされたホームゲームだったこと──すべてが悪夢だった。

 この歴史的大敗にはすでに、スタジアム名を冠した「ミネイロンの悲劇」という不名誉な名前が付けられている。

 ブラジルの代表的なニュース週刊誌ベジャは、涙を流すサポーターの写真の脇に「矢継ぎ早にゴールを決められて」という説明文を付けた。今までは、ブラジルと対戦した相手チームを描写するときに使われる決まり文句だったのだが......。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジ訪問中の中国首相、湾岸諸国との貿易交渉の加速

ビジネス

米CPI、8月は2.5%に鈍化 基調インフレに依然

ワールド

トランプ氏メディア企業の株価急落、討論会受けハリス

ワールド

バイデン氏、イスラエルに「完全な説明責任」要求 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 2
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    公的調査では見えてこない、子どもの不登校の本当の…
  • 5
    プーチンが平然と「モンゴル訪問」を強行し、国際刑…
  • 6
    恋人、婚約者をお披露目するスターが続出! 「愛のレ…
  • 7
    未知数ハリスの一発勝負!テレビ討論でトランプを負…
  • 8
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 9
    運河に浮かぶのは「人間の手」? 通報を受けた警官…
  • 10
    クルスク州「重要な補給路」がHIMARSのターゲットに.…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 8
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 9
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単…
  • 10
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中