最新記事

韓国

朴が再び反日カードを切る日

一時の勢いはどこへやら、客船沈没以降スキャンダル続きの朴が生き残り策

2014年7月2日(水)14時57分
前川祐補(本誌記者)

中国が頼り? 不支持率が50%を超えた朴の最後の切り札は Reuters

 3月にオバマ米大統領の仲介で日米韓首脳会談が実現するなど、関係構築の芽も出始めていた日韓関係。しかし再び氷河期へと戻る懸念がある。原因は朴槿恵(パク・クネ)大統領の人事だ。

 セウォル号沈没事故を受けて引責辞任した首相と国家情報院長の後任に、朴はそれぞれ韓国の大手紙・中央日報の元主筆、文昌克(ムン・チャングク)と李丙琪(イ・ビョンギ)駐日大使を指名した。しかし文は過去に、日本による植民地政策は「神の意思」だった、「怠け者で自立心が足りず、他人の世話になることがわが民族のDNA」といった発言をしていたことが明らかになり、「親日売国」として野党から指名辞退を促されている。

 李も、02年の大統領選でハンナラ党候補者の政治資金をめぐる違法行為に絡んだ疑惑が取り沙汰されており、野党からは彼を指名した朴への批判が高まっている。

 韓国の歴代大統領は、人気に陰りが見えると対日批判を繰り返してきた経緯がある。弱り目の朴も人気回復のためにまたもや「反日カード」を切るのだろうか。

 対日強硬姿勢を強める条件はそろっている。まず、人事の迷走で朴の不支持率がついに50%を超えたこと。さらに7月初めには、中国の国家主席が国賓として韓国を訪問する。その際、歴史認識について中国との「反日共闘」を確認するとみられている。

 その露払いなのか、韓国海軍は先週、日本政府の慰安婦問題に関する河野談話検証結果の発表を前に、竹島付近で異例の射撃訓練を行った。

 しかし、「困ったときの反日」を一足先に実行した文は、反日カードが裏目に出る可能性も示した。親日売国と批判を浴びた彼は先週、一転して、河野談話を検証しようという日本が「われわれの隣人になれるのか」と指摘。火消しを図るつもりだったが、逆に「極端な反日発言」と韓国メディアから批判されてしまった(編集部注:文はその後、首相指名を辞退)。

 朴も「お家芸」の反日カードを切る可能性もあるが、期待どおりにはいかないかもしれない。

[2014年7月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国最大野党の李代表に逆転無罪判決、大統領選出馬に

ビジネス

独VWの筆頭株主ポルシェSE、投資先の多様化を検討

ビジネス

日産、25年度に新型EV「リーフ」投入 クロスオー

ビジネス

通商政策など不確実性高い、賃金・物価の好循環「ステ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中