外国人排斥に走るシンガポール国民の本音
フィリピン独立記念日のイベント開催にネット上で批判の嵐が巻き起こった訳は
差別意識 シンガポール政府が昨年発表した、外国人労働者を増やす方針に反対する人々 Edgar Su-Reuters
シンガポールで最近、不穏な動きが高まっている。事の発端は、シンガポール在住のフィリピン人たちが祖国の独立記念日の祝賀イベントを企画したこと。巨大ショッピングセンターが立ち並ぶオーチャード・ロードで6月8日に開催される予定だが、ネット上では一部の国民から「不適切で無礼だ」という怒りの声が上がっている。
これは同国で外国人差別が強まっていることを示す証しだ。そして同時に、政府に対する不満の表れでもある。
現在、シンガポールで働くフィリピン人労働者はおよそ18万人。フィリピンの独立記念日の祝賀イベントは何年も前から行われているが、今年は開催日が迫るにつれてソーシャルメディア上で激しい非難が巻き起こっている。彼らいわく、国の象徴とも言える目抜き通りのオーチャード・ロードで他国の独立記念日を祝うのは、国民のプライドを逆なでする行為。フィリピン国旗を掲げたりしようものなら「侵略」に等しいという。
失業者を支援するサイト「transitioning.org」のギルバート・ゴーは、今回の祝賀イベントが「悪い前例」になるのを懸念している。「フィリピン人に認めればインド人や中国人、マレーシア人も同じことを企画しようとするかもしれない。そうなれば、いずれオーチャード・ロードは外国人が自国の旗を振り回すための場になってしまうのではないか」
シンガポール政府は、フィリピン人の祝賀イベントをネット上で口汚く罵る声を厳しく非難している。「彼らの声は国や国民の考えを代表するものではない」と、タン・チュアンジン人材開発相は自らのフェイスブックに書き込んだ。「ああした偏狭な考えには断固ノーを突き付けるべきだ」
リー・シェンロン首相も、反フィリピン人の動きを「シンガポールの恥」と断じた。「私たちは外国人居住者の数を管理する一方で、わが国に来る人々を寛大な精神で歓迎する姿勢を示さなければならない」