ウクライナ大統領選に迫る暗雲
東部の住民投票が終わり、次の焦点は大統領選だが、懸念材料には事欠かない
内戦の果てに 5月25日の大統領選での国民の選択は? David Mdzinarishvili-Reuter
重圧に押しつぶされそうになっている政府と、東部の分離独立を宣言した武装勢力と、変革とより良い生活を長く待ち望んできた国民──3者の運命は5月25日に迫ったウクライナ大統領選で決まる。おそらくこの国の歴史で最も重要な選挙になるだろう。
ウクライナ政府にとって、この大統領選は政権の正当性を示し、国を安定化させることができるかの試金石になる。ただし、ロシア政府が介入してくれば、その目論見もつぶれるだろう。
2月に親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチ前大統領が引きずり降ろされて以来、初めて全土で実施されるこの選挙は先が予測できない状況になっている。東部の分離独立派の暴力行為や、ロシア政府による妨害が懸念されるからだ。
このため、大統領選を行うことが賢明なのか、あるいはそもそも予定どおりに行える可能性はあるのか、という懐疑的な見方が広がっている。
選挙が断行されれば、東部と中央政府との対立が激化し、さらには選挙の正当性に疑念を呈すという攻撃材料をロシア政府に与えかねない。一方、選挙が中止されれば、ヤヌコビッチ後のウクライナ政府は国民の信任を得ていない、ということになる。
つまり、やってもやらなくてもバカをみる──ウクライナ政府はまさに苦境に立たされている。
東部は選挙に不参加?
ウクライナ当局に言わせれば、選挙の準備は着々と進んでおり、自由で公正に行われるのは間違いないという。
他方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先週、意外にもウクライナ大統領選の支持を表明した。
プーチンはまた、東部2州の分離独立派に対し、自治権の拡大を問う住民投票の延期も呼び掛けた(結局、投票は行われ、大半が自治権拡大に賛成した)。
とはいえプーチンのこうした発言よりも先に、ロシア政府の高官たちは相次いでウクライナ大統領選を一蹴していた。そのためプーチンのウクライナ政府に対する軟化した態度が本心かどうかは疑わしい。
さらに、ウクライナ東部は武装勢力に掌握されており、こうした地域で投票を行うのは不可能だ。