フェリー沈没事故を韓国はなぜ「恥」と感じるか
犠牲者への哀悼、当局への怒りに加えて「国の未熟さをさらした」という特有の感情がある
子供が 泣き崩れる行方不明者の家族。乗客の大半は修学旅行中の高校生だった Issei Kato-Reuters
先週、韓国南西部沖で起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故は乗客・乗員476人のうち死者・行方不明が約300人に上っている。
事故原因はまだ究明されていないが、乗員の過失による可能性も浮上。船が浸水するなか、船内放送では「その場を動くな」との指示が繰り返されたと、生存者たちは語っている。
セウォル号は傾き始める直前に右に急旋回した。この無理な針路変更で座礁したか、または貨物が固定されていなかったためにバランスを崩した可能性もある。
乗客の大半は高校生で、修学旅行で済州島に向かう途中だった。この惨事に国全体が悲しみに覆われ、行方不明者の安否に胸を痛めている。
当然のことながら、乗員の責任を問う声が噴出。特に船長は、乗客を見捨てて真っ先に逃げたのではないかと非難されている。乗客の家族らが待機する体育館では、姿を見せた朴槿恵(パク・クネ)大統領に怒号を浴びせる人もいた。
しかし他国で同様の悲劇が起きた場合とは異なり、多くの韓国人はこの件を単なる過失や当局の不手際による事故とは考えていない。韓国人は、あの沈没船に自分たちの国民性の欠点や国としての未熟さを見ている。
「たとえ乗員の不注意によるものでも、国民は韓国の恥と言うだろう」と、ソウル郊外で編集者として働く33歳の女性は言う。
確かに、悲しみと嘆きとともに恥という感情は事故翌日のソウルで多く見られた。市内でコンビニを経営している年配男性は、「韓国人であることが恥ずかしい」と叫んだ。「これで先進国と言えるのか。政府の野郎どもなんか当てにできない」
国内メディアも今回の惨事について、「混乱、軽率、救援の遅れなど典型的な途上国の対応だ」「韓国は人命を重んじない国だと国民は実感したに違いない」などと報じた。