プーチンが加速させる「アジア重視戦略」
ウクライナ危機をめぐる欧米の制裁に対抗?ロシアがもくろむ「リバランス」の真の標的とは
新たな活路 アジア太平洋地域の経済統合を目指すプーチン Alexei Druzhinin-RIA Novosti-Kremlin-Reuters
4月15日、ロシア政府のウェブサイトに次のような文書が掲載された。「ロシア連邦大統領の指示により、ウラジオストクに工業生産特別経済区を創設し、産業インフラ整備に資金を提供する」
ロシアはアジア太平洋地域の経済統合を目指している。今回の経済特区創設もその一環だ。
ウラジオストクはロシア極東の主要都市で、中国や北朝鮮との国境に近い。極東沿海地方における最大の港にして、ロシア海軍の太平洋艦隊の母港。同時にロシア経済の主要なハブとしてアジア太平洋地域との経済関係強化にも貢献している。
報道によれば、ロシアの経済特区は現在28カ所。内訳を見ると「工業生産特区6カ所、技術導入特区5カ所、観光レクリエーション特区14カ所、港湾特区3カ所」だ。「入居企業は税制上の優遇措置、輸送・社会・通関関連などの近代的インフラ、関税や付加価値税の免除、行政手続きの簡素化、優秀な人材の確保、入居手続きの簡素化などの恩恵にあずかれる」という。
積極外交で各国と関係強化
ウクライナ危機で欧米との関係が揺らいでいる今、ロシアは「アジア重視政策(リバランス)」を加速させている。2月には極東開発を統括する極東発展省の権限を拡大。4月にはインドとの間で、原発事故が起きた場合の賠償責任をめぐって難航していた原発建設計画が合意にこぎ着け、インドのシン外務次官もロシアを訪れた。インドはクリミアの危機に関してはロシアの言い分を大方支持している。
北方領土問題を抱える日本とも昨年、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を実施。3月には両国間の投資促進策を官民で話し合うフォーラムが開催されている。
3月にはガルシカ極東発展相が北朝鮮を訪問した。北朝鮮とロシアは北朝鮮南部の開城工業団地へのロシア企業の進出を協議しているという。
マレーシアとの経済協力強化も目指し、近々スホーイSu30戦闘機の納入も発表される見込みだ。マレーシアはロシアから防空ミサイルシステムを購入することにも関心を示している。
ラブロフは4月にベトナムも訪れ、サン国家主席と会談。両国の包括的戦略的パートナーシップを再確認し、エネルギー貿易を特に重視することで合意した。ベトナムとの間では、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンが加盟する関税同盟との自由貿易協定(FTA)交渉も進んでいる。