最新記事

ドイツ

場違いな「歴史論争」で中国にイエローカード

ナチスの戦争犯罪を引き合いに対日批判ドイツとヨーロッパに学ぶべき本当の教訓とは

2014年4月15日(火)15時30分
ザカリー・ケック

迷惑! 習主席の対日批判に利用されたくないメルケル首相 Fabrizio Bensch-Reuters

 ドイツの「過去」を利用して国際社会で対日批判を展開しようとする中国に、待ったがかかった。

 中国の習近平(シー・チーピン)国家主席は先月末にオランダで開催された核安全保障サミットに出席した後、フランス、ドイツ、ベルギーを回った。

 欧州訪問が正式に発表される前から、中国はドイツで「日本の軍国主義時代の戦争犯罪」への批判を繰り広げるつもりだとみられていた。ナチスの罪を真摯に償うドイツに比べて、日本の政治家は中国や韓国における残虐行為への謝罪が足りない、というわけだ。

 ただし、ドイツは当初から、中国の策略に強い懸念を示していたようだ。ロイター通信の報道によると、ある国の外交筋は、「ドイツは中国と日本の対立に巻き込まれたくなかった」と語っている。また、ドイツの外交官は、「このようなやり方にドイツは嫌気が差している。中国がいつもドイツと日本を比べ、戦争の話を持ち出すことを喜んでいない」と指摘する。

 中国はベルリンでホロコースト記念碑を視察したいと打診したが、ドイツに断られた。代わりに戦没者追悼施設の訪問を提案したところ、ドイツはメルケル首相の同行は拒否したが、習が行くのは構わないと伝えた。

 すると中国は、今回のドイツ訪問で、日本との歴史問題を国際社会にアピールするつもりだという報道を否定し始めた。駐ドイツ中国大使の史明徳(シー・ミントー)は、中国がドイツの過去を利用して日本の顔をつぶそうとしていることを、ドイツが快く思っていないとする報道を批判した。「ドイツ人は騒ぎ立てたりしない......そこが、歴史との向き合い方でドイツと日本の違いだ。そのことは世界中が知っている」

謝罪と受容による解決

 習がドイツに到着した頃、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストに、ミハエル・クラウス駐中国ドイツ大使のインタビューが掲載された。クラウスは「歴史に対するドイツの姿勢を利用して、日本と中国の緊張を刺激するのは好ましくない」と語り、ドイツは中国とも日本とも緊密な関係にあり、「2国間の領土紛争に巻き込まれるいわれはない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中