最新記事

ウクライナ

ウクライナ内戦への足音

ウクライナ軍が、東部を占拠していた親ロシア派の強制排除へ。プーチン大統領の軍事介入も近い?

2014年4月16日(水)15時20分
ジョシュア・キーティング

分離独立だ! 東部スラビアンスクの警察署前にバリケードを張った親ロ派 Gleb Garanich-Reuters

 ウクライナ政府は15日、東部ドネツクなどで行政庁舎を占拠していた親ロシア派武装勢力の強制排除に踏み切った。これでウクライナが内戦に陥るリスク、そしてロシアがウクライナ本土に軍事介入してくる可能性がますます高まった。

 ウクライナのオレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は、東部の自治権拡大について国民投票を行う意向があると述べ、親ロシア派をなだめようとした。だが効果はなく、ウクライナ政府が示した退去期限が過ぎても武装勢力は籠城を続けていた。

 トゥルチノフは14日に国連平和維持部隊の派遣を求めたが、ロシアが安保理で拒否権を発動するだろう。

 アメリカはロシアに対する制裁を強化し、より多くの個人や企業へと制裁対象を広げている。だがその努力もヨーロッパ諸国が制裁に消極的であるために損なわれている。さらに、ロシアが制裁による経済への影響を気にしていないことも問題だ。

 米政界では、共和党のジョン・マケイン上院議員のように、ウクライナ政府への武器供給を提案する声もある。ジョン・ケリー国務長官に近い高官も、「選択肢の一つとして検討している」と、14日に語った。

 しかしアメリカがウクライナに対して本格的な軍事介入を行わない限り、力のないウクライナ軍が優勢に立つことはなく戦闘が長引くだけだろう。

 ロシアが全面介入してくるかはまだ分からない。ロシア政府にとっても、ロシア系住民が多く住む東部に大幅な自治権を認めた「1つのウクライナ」のほうが、国境付近で血なまぐさい内戦が繰り広げられるよりましだろう。ただし、ウラジーミル・プーチン大統領の長期的な狙いが領土の拡張であるとするならば、今以上の好機はないはずだ。

 少なくとも、プーチンはソ連崩壊後の国境線は変更可能なものであるということを示すだろう。自分がその気になれば国境など自由に動かすことができる、と。

 ウクライナ東部スラビアンスクで行政庁舎を占拠していた親ロ派の民兵は、ロイター通信にこう語った。「ウクライナとロシア、ベラルーシの国境はつくりものにすぎない。俺たちはそれを消すためにここに来たのだ」

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、WTOでトランプ関税を非難 「一方的で世界貿

ワールド

中国、ウクライナ和平努力を支持 ガザは「交渉材料で

ワールド

新興国市場への純資金流入、1月は約354億ドル=I

ビジネス

米経済は良好、物価情勢の進展確認まで金利据え置く必
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 4
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 5
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中