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北朝鮮金日成の「笑える」長生き大作戦
長寿達成のために研究チームまで立ち上げた金日成の妄執と国家の異常
「永遠の主席」 金日成は極度に老化を恐れていた Kim Kyung Hoon-Reuters
北朝鮮では建国の父として「永遠の主席」とあがめられる故金日成(キム・イルソン)。その彼は生前、120歳まで生き永らえようと躍起になっていたらしい。
韓国紙の朝鮮日報によると、金は主治医の1人だった金素妍(キム・ソヨン)に長寿の方法を探し出すよう命じていた。素妍は79年に「偉大なる首領様」の長寿を達成するための研究機関のトップに昇格したと、自身の新著で述べている。金日成は結局、94年に82歳で死去したが、彼が長生きするために試したさまざまな方法には多くのエピソードがある。
92年に韓国に亡命した素妍によれば、首領様は65歳頃から老化を気にするようになった。そのため国内トップの医学専門家が招集され研究が始まった。
研究チームは1750種もの薬草と、それぞれが持つ健康への効能を分類。長寿に関係あるとみられた植物の効能や副作用が分析され、栽培や実験も行われた。
チームはまた、心理的な手法も用いた。それは何と「笑い」だ。医師らは金日成が少しでも笑うように促し、この方法に真剣に取り組んだ。「私たちは舞台俳優を招いて喜劇を演じさせたり、5〜6歳の子供たちに愛くるしいことをさせた」と、素妍は振り返る。首領様を1日5回以上笑わせた演者には「称賛に値する俳優」という称号が与えられたという。
金日成の長寿への野望が、北朝鮮における国家公認の芸人を育成するきっかけにもなったと素妍は言う。指導者層を楽しませるための女性の一団「喜び組」もその一例だ。
だが残念ながら、金日成が長寿の奇跡を求めてどんなに手を尽くしても健康状態の悪化は止められなかった。金は78歳になると、若くて健康な男性たちから輸血を受け始めたが、あまりの輸血量に血液型がABからBに変わったほどだったという。
素妍は、「過剰」な治療がかえって金日成の体の負担となり、死因の心臓発作につながった可能性もあると話す。永遠の主席でも永遠の命は手に入らなかったということだ。
[2013年12月 3日号掲載]