最新記事

領土問題

中国「防空識別圏」設定はアメリカのリスク

尖閣諸島も「防空識別圏」に含めた中国に日本は猛反発。中国の本気度は未知数だが

2013年11月26日(火)15時34分
ジョシュア・キーティング

高まる緊張 10月末にも中国機が沖縄本島付近の公海上空を何度も通過 Reuters

 中国政府は23日、東シナ海で戦闘機による緊急発進(スクランブル)の判断基準となる「防空識別圏」を初めて設定したと発表した。問題は、その地域に沖縄県・尖閣諸島が含まれていることだ。同地域は日本の防空識別圏にも設定されている。今回の発表を機に、日中間の軍事的な緊張が一段と高まるのではないかとの懸念が強まっている。

 国防省の楊宇軍(ヤン・ユージュン)報道官は同日、防空識別圏の設定は「いかなる特定の国や目標を想定したものではない」と主張した。しかし、これを額面通りに受け止めるのは難しい。中国側は、防空識別圏を飛ぶすべての航空機はその身元を明らかにしなければならないとし、中国の指令に従わない航空機に対しては「防御的な緊急措置を講じる」可能性があると強調した。

 予想通り、今回の発表を機に日中間では非難合戦が高まっている。またジョン・ケリー米国務長官も、今回の中国の決定に「深い懸念」を表明した。

 今回設定した防空識別圏を技術的に守る力が中国にあるかどうかは測りきれない部分もある。そもそも今回の動きは本気なのか、それとも尖閣諸島に関してより強い姿勢を打ち出すべきだとする国内の強硬派をなだめるための政治的ジェスチャーに過ぎないのか。

 発表と時を同じくして、中国は情報収集機を尖閣諸島周辺に派遣。日本の航空自衛隊が戦闘機を緊急発進させる事態となった。幸い、中国機がすぐに退去したので緊迫した状況は早々に収まったが、 偶発的な事故や行き過ぎた行為がいかに簡単に制御不能の状態にエスカレートし得るかを示唆する一件となった。

 アメリカでは、尖閣諸島をめぐる対立についてはあまり報じられないし、アメリカ人は概して日中両国が思っているほどこの問題を気にかけていない。しかし好むと好まざるとに関わらず、アメリカは今後もこの問題に巻き込まれるだろう。そして日中双方の感情の高まりを見る限り、大半のアメリカ人が思っているよりはるかに危険な状況にあると言えるだろう。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ワールド

香港北部の高層複合アパートで火災、4人死亡 建物内

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し

ビジネス

ドイツの歳出拡大、景気回復の布石に=IMF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中