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米犯罪囚人はなぜ簡単に自殺できるのか
米オハイオ州の女性監禁事件の犯人が首を吊った。厳格な監視下にあるはずの刑務所で囚人の自殺が多いのはなぜか
凶悪犯 誘拐、レイプ、殺人などの罪を償う機会は失われた Reuters
米オハイオ州で約10年にわたり女性3人を監禁していた凶悪犯アリエル・カストロ(53)が3日夜、刑務所内で首を吊って自殺した。終身刑と禁錮1000年の有罪判決を受けて収監されたのは、わずか1カ月前のことだ。
カストロは保護拘置下に置かれ、30分ごとに看守が見回りにきていた。にも関わらず、誰にも気付かれずに自殺を遂げた。「保護拘置下にありながら、どうやって首吊り自殺を図ることができたのか」──今回の一件に限らず、刑務所の管理体制としてよく指摘される問題だ。看守たちは受刑者の自殺を阻止しようと対策に苦心しているが、いまだ有効な手だてが見つかっていない。
米司法統計局が最近発表した刑務所内の死亡率に関するデータによれば、2000年から2011年における地方の刑務所での死亡原因は自殺が突出して多かった。同期間における州刑務所での自殺率は地方刑務所に比べれば低かったが、それでも死亡原因として自殺は(受刑者同士などによる)殺人の3倍だった。
自殺の大半は首つりによるものだ。絞首刑は首の骨が折れて即死するが、囚人が地面に足をつけたまま首を吊る自殺は、窒息死するまでにかなりの時間を要する。そのため理論的には、看守が途中で気付けば、自殺行為を止めることができるはずだ。しかしアメリカの刑務所は囚人の数が多過ぎる割に看守の人手が不足しており、多くの自殺が見過ごされている。
GEが監視システムを開発?
厳重な監視で自殺のリスクを抑えることはできるが、そのリスクを完全になくすことはできない。自殺の監視とは、囚人を特別な部屋に入れて、時間を決めず不定期に様子を見に行くこと。部屋には監視カメラもつけられるが、死角ができることもあるし、監視映像を常にモニタリングできるとも限らない。自殺を図る可能性が極めて高い囚人に対しては、看守を24時間張りつけるという手もあるが、それをずっと続ける人手も資金も不足している。
テクノロジーの力を借りる手もある。例えば、ゼネラル・エレクトリック(GE)はドップラー効果を利用した警報システムを開発中だ。このシステムは監房に設置され、囚人の心臓音の異変・停止、呼吸困難などの異常を感知すると、看守に知らせる仕組みだという。
このドップラーシステムが本当に有効かどうかは分からない(GEの試作品のテストはうまくいったらしいが)。ただ言えるのは、こうしたテクノロジーによる解決法は大いに模索してみる価値があるということ。塀の中での自殺を止めたいと願う人たちは、わらにもすがる思いなのだから。
© 2013, Slate