最新記事

同性愛

ロシア陸上選手が反同性愛法に抗議のキス?

同性愛支持と不支持でアスリートも真っ二つに分かれた世界陸上モスクワ大会

2013年8月20日(火)16時07分
ダニエル・ポリティ

歓喜か抗議か 400メートルリレーの表彰台でキスをしたロシアの選手 Grigory Dukor-Reuters

 ロシアで開催された世界陸上モスクワ大会で17日、表彰台に上がったロシアの女性選手2人がキスをした。この行為は、ロシアで6月に制定された同性愛を促す行為を禁じる「同性愛宣伝禁止法」に抗議するためのものではないかと、メディアで騒がれている。

 キスを交わしたのは、女子400メートルリレーで金メダルを獲得したロシアチームのクセニア・リジョワとタチアナ・フィロワ選手。英スカイニュースは、このキスを政治的メッセージだと確信しているが、他のメディアはそこまで断言できないようだ。主に同性愛に関するニュースを報じるゲイ・スター・ニュースは、2人の選手が何の声明も出していないため、あのキスがただの歓喜の愛情表現なのか同性愛宣伝禁止法に反抗したものなのか「不明だ」とした。

 いずれにしても、2人の選手は同性愛宣伝禁止法に違反したことになり、法的に罰せられる可能性もある。

 このキスの前日には、ロシアの女子棒高跳び選手エレーナ・イシンバエワが、自身の同性愛に関するコメントが誤解されたまま世界で報じられていると弁明したばかりだ。「英語は私の母語ではないので誤って伝わっているかもしれない」

 イシンバエワは15日、「私たちは普通のノーマルな人間。男性は女性と、女の子は男の子と生きていく」と、同性愛宣伝禁止法を擁護する発言をした。だがその後に前言を撤回して表現を和らげた。イシンバエワいわく「人々は他国の法律を順守すべきだ。特にその国にゲストとして招かれているときは」と、自分は言いたかったのだと主張した。彼女が同性愛について発言したのは、スウェーデンの選手が虹色のネイルアートで同性愛者の権利支持を表明した後だった。

 同性愛宣伝禁止法は成立以降、各方面から非難されており、来年ロシアで開催されるソチ冬季五輪のボイコットを呼びかける声も高まっている。アスリートたちもこの法律に批判的だ。

 男子800メートルで銀メダルを獲得したアメリカのニック・シモンズ選手は、ロシア国内で同性愛宣伝禁止法を批判した初のアスリートとなった。彼はロシア国内にいる間は何も言わないと心に決めていたが、「もう黙っちゃいられない」とCNNに語った。ロシアの路上でキスしていた女性2人に怒った男性が彼女たちを押し倒そうとしたCNNの映像を見て、抗議の声を上げずにはいられなくなったと言う。「彼女たちはお互いへの愛を表現したいだけだ。(なのにあんな仕打ちを受けるなんて......)ぞっとするよ」

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏「非常に生産的」、加首相と国境・貿易・エ

ビジネス

アングル:スマホアプリが主戦場、変わる米国の年末商

ビジネス

焦点:不法移民送還に軍動員へ、トランプ氏の構想は法

ワールド

カナダ首相がフロリダ訪問、トランプ氏と会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 2
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 3
    白昼のビーチに「クラスター子弾の雨」が降る瞬間...クリミアで数百人の海水浴客が逃げ惑う緊迫映像
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    「すぐ消える」という説明を信じて女性が入れた「最…
  • 6
    LED化を超える省エネ、ウェルビーイング推進...パナ…
  • 7
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 8
    真っ赤な「溶岩の海」が翼のすぐ下に...飛行機からア…
  • 9
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていた…
  • 6
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中