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サッカーカタールよ、お前もか! W杯開催の搾取政治
22年大会を目指して建設ラッシュが続いているが、事故多発や労働者搾取のひどさに開催取り消しを求める声も
期待しすぎた? 22年のW杯開催地に決まった際は市民も大喜びだったが(10年、首都ドーハ) Fadi Al-Assaad-Reuters
フランス人サッカー選手ザヒール・ベルーニスが、カタールのチーム「アル・ジャイシュ・ドーハ」と契約を結んだのは2010年のこと。この契約で、彼のキャリアの行く先には高額報酬と明るい未来が待っているように見えた。
しかし、カタールで彼が直面したのは苦い現実だった。もう2年近く給料をもらえず、プレーもできない状態が続いている。「俺のキャリアは終わりだ。一銭も残っていない。最悪だ」とベルーニスは言う。チームの許可がないため、カタールから出国することさえできない。
ベルーニスのケースは、カタールの外国人労働者が置かれる残酷な待遇の一例にすぎない。
22年ワールドカップ(W杯)の開催国カタールでは最新式スタジアム12カ所、ホテルの新増築(約9万室)、鉄道網などのインフラ整備として、1500億ドル規模の建設プロジェクトが開始される。この建設ブームを狙い、新たに約100万人の外国人労働者が入国する見込みだ。
湾岸諸国ならではの不条理な制度
しかし国際労働組合総連合(ITUC)は、カタールの建設現場のずさんな安全管理による事故多発や外国人労働者の搾取を問題視し、W杯の開催地として不適格だと警告。FIFA(国際サッカー連盟)に対して、開催国決定の投票やり直しまで求めている。
ITUCが特に厳しく批判するのは、裕福な湾岸諸国に特有の「カファラ」と呼ばれる契約制度だ。この制度の下では、外国人労働者は雇用主の許可なしには転職も出国もできない。
ベルーニスもこの制度の犠牲者だ。彼は10年にアル・ジャイシュと5年契約を結び、キャプテンとして1部リーグへの昇格に貢献した。だが次のシーズンには2部リーグの別のチームへのレンタル移籍を命じられた。彼はアル・ジャイシュから年俸は同額を約束すると言われ、渋々ながら移籍に応じた。
ところが移籍後、給料は支払われず、ベルーニスは訴訟を起こすことに。彼は現在、どちらのチームでもプレーできず、妻と幼い子供2人を養っていくことができない状態だ。カファラ制度のせいでフランスに帰国することもできない。
カタールは小国ではあるが、オイルマネーを背景に世界での影響力の増大を図っており、サッカーはその手段の1つだ。スペインのFCバルセロナは、約2億ドルのスポンサーシップ契約を受けて、ユニホームに「カタール財団」の名を記している。
FIFAへの賄賂疑惑も浮上
フランスのパリ・サンジェルマンFCは昨年、カタール投資庁の子会社を単独オーナーに迎えて世界一の金持ちクラブになり、デービッド・ベッカムやズラタン・イブラヒモビッチなどのスター選手と契約を結んだ。
カタール政府は多額のカネを使って、ライバルのアメリカ、日本、韓国、オーストラリアを蹴落とし、W杯ホスト国の地位を勝ち取った。意外な投票結果に、FIFAの理事の中にカタールから賄賂を受けた者がいるという疑惑も指摘された。
カタール当局としては、W杯が開催できなくなるような事態は何としても避けたい。「外国人労働者の待遇は改善の必要があることを認識している」と、カタールW杯実行委員会は取材に対してメールで回答を寄せた。
しかしITUCのシャラン・バロウ書記長に言わせれば、何カ月も議論を重ねたが、カタール政府がカファラ制度の廃止などの改革に本気で取り組む様子は見えない。
ベルーニスはハンガーストライキも辞さない構えだ。ここまで追い詰められている外国人労働者は、おそらく彼一人ではないだろう。
From GlobalPost.com特約
[2013年5月28日号掲載]