最新記事

対テロ戦争

3カ国「同時」脱獄はアルカイダ復活の前触れ?

1週間ほどの間に3カ国で連続して発生した脱獄事件は、偶然で片づけられない

2013年7月31日(水)17時57分
エミリー・ロディッシュ

組織的攻撃 破壊されたパキスタンのデラ・イスマイル・カーン刑務所(7月30日) Reuters

 陰謀論者が盛り上がりそうな話だ。陰謀とまでは言えないまでも、偶然とも言い切れない。同じようなことが2度ならず3度起きたとなれば、何らかの意図を感じざるをえない。

 この1週間ほど、イラク、リビア、そしてパキスタンで、立て続けに大がかりな刑務所襲撃と脱獄事件が起きたのは、果たして偶然なのか。

 3つの事件が関連していると示す証拠はない。だがいずれの国でも、逃げ出した中には武装勢力のリーダーたちが含まれていた。専門家たちは一連の事件は偶然ではないと警鐘を鳴らしており、アルカイダの「世界規模の復活」の前兆と見る向きまである。元情報アナリストのジョシュア・ファウストは次のように指摘する。


 アルカイダは、こうしたことが起きると以前から予告していた。昨年の夏、イラクのアルカイダのリーダーであるアブ・バクル・アル・バグダディはオンライン上の声明で、かつて米軍に一掃された彼の武装組織の拠点は再建されつつあるとした。

「君たちに朗報だ」と、彼は支持者に向けて語った。「われわれは『壁を打ち破れ』と名付けた計画によって、戦いの新たな局面に突入している。忘れるな。君たちが優先すべきは、イスラムの囚人たちを解放することだ」


第1の事件:イラク


 7月21日、首都バグダッド近郊にあるアブグレイブ刑務所とタージ刑務所で脱獄事件が発生。爆弾を積んだ車が刑務所に突っ込み、さらには銃で武装した男たちが刑務所を襲撃したという。

 警備兵たちは迫撃砲や携行式ロケット弾などで攻撃され、20人以上が死亡した。この事件で500人以上の受刑者が逃げ出し、7月23日にアルカイダが犯行声明を出した。「脱獄した受刑者の多くは、死刑判決を言い渡されていたアルカイダの幹部だった」と、イラク政府の安全保障・防衛委員会の上級メンバーであるハキム・アルザミリは言う。

第2の事件:リビア

 7月27日、北部の都市ベンガジにあるアルクイフィヤ刑務所内部で暴動が発生し、外部からも攻撃を受けた。これにより1000人の受刑者が脱獄した。

 脱獄者の多くは一般の犯罪者だったが、一部は前最高指導者ムアマル・カダフィ政権につながりを持つ者たちだったという。100人近くが再び身柄を拘束されたが、現在でもリビアにはこうした暴力が残っていると思い知らされる事件となった。

第3の事件:パキスタン

 7月29日の夜、タリバンやイスラム過激派勢力のメンバーたちが拘束されていたパキスタン北西部のデラ・イスマイル・カーン刑務所が武装したグループに攻撃され、約250人が脱獄。パキスタンのタリバン勢力が犯行声明を出した。逃げ出した中には武装勢力のリーダーや死刑囚もいたという。


From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン副大統領、トランプ氏の「合理的行動」に期待

ワールド

フーシ派、日本郵船運航船の乗員解放 拿捕から1年2

ワールド

米との関係懸念せず、トランプ政権下でも交流継続=南

ワールド

JPモルガンCEO、マスク氏を支持 「われわれのア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中