最新記事

中国

「反中」台湾出身作家vs歌舞伎町案内人<3>

2013年4月25日(木)17時50分
構成、本誌・長岡義博

kobunyu130425_02.jpg黄:外から中国に同情する、ということですが、中国は一方で内政干渉を嫌います。中国は社会の安定を最も重視しているし、中国にとって大切なのは人権よりも生存権。これは誰も解決できない。
 中国には食糧が足りないが、日本も足りないから日本には解決できない。日本にできるのは技術支援ぐらいですよ。これは今の政権と国民が何とか自分たちで解決しなければならない。

李:できない! できませんよ。鄧小平の改革開放で私も日本に来ることができた。もし改革開放がなければ、今もきっと日本のことを「小日本(シアオリーベン)」と思っていたでしょう。経済的な交流から始まって、人と人が肌と肌で感じ合うことで、民主主義も伝わる。
 最近私の店には中国の「右派」がよく来るんです。外務省とか国際交流基金の招待で、南方都市報(編集部注:リベラルな主張で知られる広東省の日刊紙)の記者などが来ている。もし中国政府が本当に交流したくないなら、出国ビザが出ないはず。だから今の中国にまったく民主主義がないわけじゃない。

黄:必ずしも中国がわれわれと同じ民主主義を求めないといけないわけではありません。かつての古代ギリシャのような民主主義もある。今中国で問題なのは、毛沢東がかつて実現した平等が鄧小平の「先富論」で崩れていること。さらに習近平が中華圏のみを念頭に置いて「中華振興」を掲げている。この夢は世界の夢とは違う。中国中心の「大中華共栄圏」より、大東亜共栄圏の方が多様性があるくらいですよ。

李:そうとは限らないですよ。今の中国は北朝鮮ではない。文化人などの間では中国政府批判も多い。

黄:それに例えば日本政府や日本財界がいくら中国を支援しても、支援し切れるものではない。

李:私が言っているのはそういうことではありません。カネじゃない。だってさっきの話ではカネは国外に流出させるほど大量にあるわけでしょう? 政府同士のメンツではなく、互いの国民のために......。

黄:李さんは知らないでしょうけど、日銀が中国支援しなかったら中国はつぶれると思いますよ。

李:知ってますよ! この間も北京に駐在していた日銀マンがうちの店に来て話をしていたのですが、中国へのODAは日本なしでは成り立たなかった。改革開放は日本円なしにはできなかった。

黄:中国の改革のためには、例えば習近平以外の、別の勢力を支援するといった方法が必要。改革の必要性を理解するかつてのゴルバチョフのような人が政権を取れば中国が変わると、中国から外に出て支援をしている人は言っています。民主化運動には期待していません。ゴルバチョフでなくても、フルシチョフのような人でもいい。

李:1人じゃだめですよ。例えそれが習近平でも李克強(首相)でも、1人では何も出来ない。私が言いたいのは、交流することが大事。中国でもインターネットで「壁越え」すれば何でも見れるし、出国も基本的には自由です。実際、日本に旅行に来たすべての中国人は、日本の美しさや便利さを理解して、口コミで日本の宣伝を始めている。

黄:私も支援できるところはしているし、(中国と)ケンカしたい訳ではない。基本的に李さんの考えは理解するが、ただそれは現実には不可能に近い。中国の民主化は台湾にとってプラスになるという考えがありましたが、直面する問題が多過ぎてなかなかすべてを変える、という訳には行かない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中