最新記事

人道問題

シリア内戦、死者最多でも救いの手はなし

ひと月の死者数が過去最高を記録したシリア内戦に、国連は人道的な役割以上の関与を求められている

2013年4月3日(水)15時30分
プリヤンカ・ボガーニ

死者12万人説も アサドと反体制派の戦闘は2年以上続いてもやむ気配がない Abo Oday -Reuters

 シリア内戦が始まって以来、この3月は最も犠牲者が多い月になった。

 イギリスを拠点にするシリア人権監視団は4月1日、シリアでの死者数が6005人を記録したと発表した。

「3月だけで6005人が殺害された。2080人が一般市民で、そのうち298人が16歳未満の子供。女性は291人が犠牲になった」と、同団体のラミ・アブデル・ラーマン代表は言う。また内戦による犠牲者の総数は6万2554人になったという。

 シリア人権監視団は反アサド政権寄りの立場だが、報道によれば、シリア内戦における人権侵害は政権側と反体制側の両方で行われている。

「死者数がそれ以上に多いのは分かっている」と、ラーマンは言う。「われわれは実際の犠牲者数が12万人に達するのではないかと試算している。多くは確証を得るのが難しく、公式な数にはまだ入れられないでいる」

アサド後のシリアを視野に

 ラーマンによれば、3月に殺害された犠牲者のうち2000人は反体制派勢力の戦闘員だ。そのうち588人ほどは名前を特定できていない。その中には外国人戦闘員も含まれる。

 また、アサド政権側の刑務所でどのくらいが死者が出ているのかも不明で、正確な死者数の把握は困難だ。国連は、7万人ほどだと見ている。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラによれば、アサド政権が崩壊すれば、国連は治安維持部隊の投入を含むあらゆる選択肢を視野に入れている。

「国連は人道的な役割を担うつもりでいた」と、アルジャジーラは報じている。「ただ今になってもシリアに関与したがる国がほとんどないなか、それ以上の役割を担う必要になるかもしれないと認めている」

 国連では、政権崩壊後の介入計画が秘密裏に進められており、そのコードネームは「シリア:崩壊後」と呼ばれているという。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VW労使、賃金と雇用保障巡りなお平行線 交渉継続

ワールド

ブラジル中銀、インフレ見通し引き上げ 政策課題浮き

ワールド

米共和、新たなつなぎ予算案策定 トランプ氏も支持

ビジネス

エヌビディアの半導体、中国への流出疑惑で米商務省が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 3
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    「均等法第一世代」独身で昇進を続けた女性が役職定…
  • 8
    米電子偵察機「コブラボール」が日本海上空を連日飛…
  • 9
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 10
    日産とホンダの経営統合と日本経済の空洞化を考える
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 9
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 6
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 7
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中