最新記事

南ア

ピストリウス事件に犯罪大国の闇を見る

男尊女卑思想を振りかざし、暴力で女を支配するのはピトリウスだけではない

2013年3月5日(火)14時48分
ユシービアス・マッカイザー

堕ちた英雄 DV疑惑も浮上したピストリウス Siphiwe Sibeko-Reuters

 侵入者と勘違いした結果の事故という供述が認められるのか、計画殺人だという検察の主張が通るのか。南アフリカの義足の五輪ランナー、オスカー・ピストリウスが自宅で恋人を射殺した事件の裁判では、両者の言い分は真っ向から対立し、多くの謎が残されている。

 だが、この事件で確かなことが1つある。南アでは社会階層や人種を問わず、社会の隅々にまで暴力犯罪が蔓延しているということだ。

 ピストリウスが家庭内暴力(DV)の加害者だったと報じられても誰も驚かないほど、南アではDVが横行している。黒人か白人か、富裕層かスラム街の住人かを問わず、多くの男たちが男尊女卑思想を振りかざして妻や恋人を暴力で支配する。

 一方、強盗と間違えたというピストリウスの言葉が真実だとすれば、それは厳重に警備された豪邸に住んでいても、常に身の危険を感じずにはいられない犯罪社会の実情を象徴している。

 かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)が存在した南アでは、人種的憎悪に基づく犯罪が多発していると思われがちだ。しかし現実には、何の理由もなく無差別に犯罪に巻き込まれるケースがあまりに多い。

[2013年3月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

今年の世界経済成長率は昨年並みの2.8%に=国連経

ワールド

ガザ停戦協議で一定の進展、合意まだ=パレスチナ当局

ワールド

マスク氏、独極右政党党首と対談 支持表明にEUが対

ワールド

ロス山火事、鎮火率依然0% プロバスケ試合も延期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 3
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映像に「弾薬が尽きていた」とウクライナ軍
  • 4
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 5
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 6
    「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人…
  • 7
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 8
    いち早く動いたソフトバンク...国内から「富の流出」…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! …
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 3
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 9
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中