最新記事

社会

レイプや銃撃を女装のせいにする偏狭

ブリュッセルの大学が集団レイプ事件を機に「女装禁止令」を発令したが、人権侵害を煽ると非難の声も

2012年11月29日(木)15時54分

ドレスを着た男性 人と格好が違うというだけで襲う人間のほうこそ襲撃禁止令が必要では Demian Chavez-Reuters

 ベルギーのブリュッセル高等教育大学が学生に「女装禁止令」を発令した。きっかけは、女装をしていた男子学生が集団レイプの被害に遭ったことだ。「女装を挑発的な行為と受けとめる人たちもいる」と、大学側は学生に注意を喚起した。

 レイプ事件が起きたのは先月のこと。大学の社交クラブに入会するための儀式として女性の格好をしていた男子学生が、少年のグループに身ぐるみはがされ暴行された。彼らはさらに学生を人気の少ない駐車場まで引きずり出し、レイプした。レイプに及んだのは、グループの中の15歳と17歳の少年で、現在身柄を拘束されている。

 大学の広報が地元メディアに語ったところによれば、女装禁止令は学生自治会と話し合ったカウンセラーから提案されたもので、拘束力はないという。

 とはいえ、このような警告を発するだけでも「誤ったシグナル」を送ることになると、ブリュッセル首都地域政府のブルーノ・ドゥリール機会均等担当相は地元メディアに語っている。

「レイプは被害者のほうに非があると示唆しているようなものだ。トランスジェンダーの人たちはどうなるのか? 彼らも(自分を押し殺して)『順応』すべきなのか? われわれは被害者の味方であること、加害者の行為は決して許されず重罪に問われるべきであることを、はっきり示さないといけない」

 だが、似たような前例もある。今年2月、米バージニア州のある学区は、いじめ対策として生徒の男装と女装を禁じることを提案した。教育委員会が引き合いに出したのは、08年にカリフォルニア州で化粧をしアクセサリーをつけて登校した15歳の少年がクラスメートに銃殺された事件。しかし市民団体から人権や表現の自由を侵害するとの抗議を受け、提案は撤回された。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中