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中東イスラエルのガザ攻撃に潜む皮算用
総選挙を控えたネタニヤフ首相はハマスに強硬姿勢を示すことで右派勢力の支持を固めたいという思惑も
強硬姿勢 イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザの大規模空爆を展開(11月16日) Ronen Zvulun-Reuters
イスラエルの選挙といえば、結果を予想しづらいのが常だった。パレスチナへの土地譲渡を望む勢力とイスラエル領土の拡大を求める勢力の力が拮抗し、どちらかが僅差で過半数を握るか、駆け引きと妥協で連立政権が生まれることが多かった。
だが近年、この傾向に変化が見られる。ネタニヤフ首相は10月、総選挙の前倒しを発表したが、この選挙では彼が率いる右派勢力が圧勝する見込みだ。
世論調査によると、ネタニヤフの支持率はライバルの2倍以上に当たる50%以上。右派連立政権を構成する政党の支持率も上昇している。
ネタニヤフは右派の支持を伸ばす上で大きな役割を果たしてきた。09年3月の首相就任以来、テロの発生率は下がり、多くの国が不況を脱するのに苦しむなかで経済も安定。テロも経済もイスラエルの有権者にとっては極めて重要な問題だ。
反イスラエル運動が高まるリスク
だが右派の勢力拡大の背景には、より長期的な流れもある。右派を支持する正統派と超正統派のユダヤ教徒がイスラエルで増えているのだ。現在、この両派は人口の約25%を占めているが、今後20年以内に40%に増えるという予測もある。
彼らがタカ派を好む政治姿勢を変えることはまずないだろう。宗教的信条から、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区に当たる地域の統治権はイスラエルにあると考えているためだ。
強固な支持層を握っていれば政権基盤は盤石に見えるものだが、紛争など突発的な出来事で政界勢力図が一変することもある。
長期にわたって政界を支配してきた左派勢力の権威が失墜したきっかけは、73年の第4次中東戦争だった。彼らが盛り返したのは約15年後。パレスチナ住民が大規模な反イスラエル闘争を起こした後だ。
西岸地区でのパレスチナ人の不穏な動きや、パレスチナとの和平プロセスの行き詰まりを考えると、新たな反イスラエル運動が起きる可能性もある。
そうなると、いずれ選挙の結果予想はまた難しくなるかもしれない。ネタニヤフもそれは承知しているだろう。96年の首相公選で彼がごく僅差で辛勝したのは、パレスチナ過激派のテロが激化していた時期だった。
[2012年10月24日号掲載]