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中国政治薄煕来の処分から占う中国新体制
党籍剥奪という厳しい処分は、対日強硬路線と同様、新指導部人事を巡る権力闘争の表れだった
世代交代 胡錦濤(左)から習近平へのバトンタッチは動かないが Alfred Cheng Jin-Reuters
重慶市副市長がアメリカ総領事館に駆け込む、という前代未聞の不祥事で中国共産党指導部に激震が走ってから8カ月。共産党は先週、ようやく胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席から習近平(シー・チーピン)副主席へトップの座をバトンタッチする党大会を11月8日に開くと発表した。
2月の駆け込み騒動以来、指導部は重慶市トップだった簿熙来(ポー・シーライ)のスキャンダルで大揺れに揺れてきた。騒動をきっかけに薄の妻によるイギリス人毒殺事件が暴かれ、事件は薄自身の解任劇へと拡大。そのあおりを受け、薄が目指していた社会主義回帰路線と、胡や温家宝(ウェン・チアパオ)首相が支持する成長・開放重視路線の対立が表面化した。
従来は8月末に行われる党大会の日程発表がここまでずれ込んだのは、党内対立のあおりで駆け引きが複雑化し、新指導部の人事がなかなか固まらなかったため、とみられている。これまで9人だった最高指導部に当たる政治局常務委員の数が7人に減るという見方もあるが、肝心の人選は党大会最終日まではっきりしないだろう。
ただ、新体制を探るヒントはある。党大会の日程と同時に公表された薄の最終処分だ。薄は党籍を剥奪、一切の公職から追放された上で、収賄などの犯罪行為を司法機関から追及されることになった。
当初は党籍を剥奪されないという見方もあった薄に厳しい処分が下ったのは、後ろ盾だった保守派が対立する胡に押し切られたことを意味する。勢いを得た胡は前任者ののように、しばらく軍トップの座に居座り影響力を残すかもしれない。胡が尖閣問題で反日デモを容認し、日本に強硬姿勢を示したのも、対立する保守派をにらんだ動きだった可能性がある。
もっとも、胡自身も決して無傷ではない。側近の息子がフェラーリの無謀運転で事故死し、この側近が降格されるという不祥事も発生。習や李克強(リー・コーチアン)副首相の選出はほぼ動かないが、それ以外の人選は保守派との妥協の産物になるかもしれない。
今回、党大会開催を発表する新華社の文章から、従来は必ず書かれてきた「毛沢東思想を堅持する」という表現が消えた。毛沢東をシンボルに掲げた社会主義回帰路線の排除を強調するためとみられるが、共産党が建国の最大の功労者と位置付ける毛を抹消するのは一大事だ。
それほど今回のスキャンダルが党にとって深刻だった、ということだろう。
[2012年10月10日号掲載]