最新記事

自然災害

米被災地に援助を申し出るイラン版赤十字

イラン赤新月社がアメリカに支援を表明。だが赤新月社スタッフにはスパイの疑いも

2012年11月2日(金)17時33分
マリヤ・カリムジー

援助はお手のもの イラク・バグダッドの貧困層に生活物資を支給するイラン赤新月社 Thaier Al-Sudani-Reuters

 イランが宿敵アメリカに手を差し伸べる?

 ハリケーン「サンディ」に襲われた米東海岸の被災地に、イランの赤新月社が支援チームを送る構えを見せた。「われわれにはアメリカの被災者を助ける用意がある」と、イラン赤新月社のマハムード・モザファル代表が政府系のファルス通信に語った。支援チームは米政府の了承が得られ次第、アメリカへ向けて飛び立てる状況にあるという。

 サンディ被害に対するイランの対応は、イランが8月に2度の大地震に見舞われ甚大な被害(死者300人、負傷者5000人)を受けた際に、アメリカが制裁を一部解除して援助を後押ししたことへのお返しともとれる。

 これまでさまざまな自然災害の現場で支援を行ってきたイラン赤新月社には、被災地での迅速な救援活動に関するノウハウがある。しかし内部告発サイト「ウィキリークス」で明らかにされた文書によれば、米政府は赤新月社のスタッフが他国での支援中にスパイ活動も行っている可能性を疑っている。赤新月社がイラン政府と近い関係にあるためだろう。

 一方、米国務省は「現時点でイラン政府もしくは同国の組織から正式な支援の申し出はない」としている。

 サンディの襲来後、アメリカに支援の意向を示したのはイランだけではない。パキスタンでは、米政府から1000万ドルの懸賞金をかけられているイスラム過激派ラシュカレ・トイバの創始者ハフィズ・ムハマド・サイードが、ボランティアや救援物資を送る用意があると表明した。

 深刻な被害を受けたニューヨークやニュージャージー州では、救援隊による瓦礫の撤去作業が始まっている。倒壊した家屋から遺体が見つかるなど被害状況が明らかになるにつれて、犠牲者数が急増。死者数は100人近くに達している。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ラピダス、半導体設計受託企業と協力覚書 所要時間「

ビジネス

サムスン電子、韓宗熙共同CEOが急逝 家電・モバイ

ワールド

中国が米社スタッフ解放、2年拘束 外資の懸念緩和目

ビジネス

保有ETF、すぐに処分すること考えてない 時間もら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 8
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 9
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 10
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 9
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中