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東アジア初の空母に込めた中国の見栄
ソ連製空母を改修した「遼寧」は時代遅れだが、新たな影響力を誇示し愛国心を駆り立てるには十分だ
ステータスシンボル 空母保有は大国のしるし(大連港の「遼寧」) Reuters
先週、中国北部遼寧省の大連港で中国初の空母「遼寧」の就役式典が行われた。人民服に身を包んだ胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が海軍儀仗兵を閲兵する光景は、中国海軍の新時代の幕開けというより50年代の中ソ関係黄金期を思わせた。遼寧の艦長のコメントもどこか時代遅れだった。「胡国家主席から軍旗を渡され、神聖なる誇りで胸がいっぱいになった」
中国にとって空母を所有することは長年の夢だった。遼寧の正体はソ連末期に設計され、ソ連崩壊後はウクライナ政府の所有となっていたものを98年にマカオの企業が買い取り、その後中国に渡ったワリャークだ。6万7500トン級の空母といえばアメリカのエンタープライズ級、ニミッツ級空母に次ぐ規模。大連港で全面改修された遼寧は船体以外「すべて中国が開発・生産した」と、軍高官は中国共産党機関紙の人民日報に語った。
とはいえスマート爆弾や無人機の時代に、巨大で動きの遅い空母を重視すること自体が時代遅れ、との見方もある。中国の有人月面着陸計画が50〜60年代のアメリカやソ連の二番煎じと批判されているのと同じだ。
しかしそれが中国の狙いかもしれない。中国もついに国連安保理の他の常任理事国並みの空母保有国になったと、国内の報道は力説している。一部の専門家によれば、空母保有は中年男が高級スポーツカーを乗り回したがるのと同じで一種のステータスシンボル。中国にとって近隣国と領有権を争う東シナ海や南シナ海で軍事力を誇示できることも重要だが、東アジア初の空母保有は(有人月面着陸と同様に)世界の大国になったという何よりのアピールだ。
このメッセージは国際社会だけでなく中国国民にも向けられている。人民日報系の環球時報は、そうした躍進は中国が「長年いじめられた」末に「正常な発展と国威を回復する」のに役立つとし、遼寧を「中国の影響力構築の節目」と呼んだ。「中国人民の心理的な節目にもなることを願う。中国人はそろそろ劣等感と決別するべきだ」
中国はほかにも独自設計による新空母を建設中と報じられている。温家宝(ウエン・チアパオ)首相が就役式典で政府を代表して読み上げた祝電によれば、遼寧は「愛国心と国民精神を鼓舞し、国防技術を推進する上で極めて重要な意義を持つ」。どうやらそれが中国の本音らしい。
[2012年10月10日号掲載]