少林寺本家が拝金主義で大儲け!
武術の元祖・少林寺は今や一大ブランド。だが仕掛け人の住職には悪い噂が付きまとう
IPOの噂も出た 少林寺は今や世界のセレブが集う一大観光地 China Photos/Getty Images
中国・河南省の少林寺といえば、伝統武術「少林拳」の発祥地。多くのカンフー映画の舞台になり、人気ヒップホップグループのウータン・クランも心酔している。
現在の統括責任者は、第30代方丈(住職)の釈永信(シー・ヨンシン)。99年の就任以来、少林寺を金のなるブランドに変え、世界各地で演武ショーを行い、多数の観光客を集めてきた(10年の参拝者は200万人以上)。
その中にはヘンリー・キッシンジャー元米国務長官、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も含まれる。NBA(全米プロバスケットボール協会)のスーパースター、シャキール・オニールは少林寺を訪れて「ブッダの祝福」を感じたと、09年のブログに書いている。
聖と俗、現代と伝統、共産党と民衆──相反するものを両立させる釈は、現代中国の成功モデル。党の統制下にあるビジネスと宗教の接点で巧みに立ち回っている。
一部には少林拳の伝統を守る偉人という評価もあるが、党におもねる「商売人」という批判もある。巨額の「贈り物」を受け取る、寺の聖域で焼香する権利に大金をふっかける......。本人は否定するが、評価は真っ二つに分かれている。
09年、少林寺の公式サイトがハッキングされ、金儲け主義に走ったことをざんげする改ざん文書が表示された。昨年3月の全国人民代表大会(国会)では、黄色の法衣姿にiPadを手にして議場に現れ、ニュースになった。
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昨年、本誌の取材を受けた釈は批判の的になっている世俗的な面をほとんど見せず、慈悲と調和を世間に広げる僧侶の務めを果たしているだけだと語った。
「寺の僧は家族も同然」だと、釈は言った。5月の暖かい日だったが、室内はひどく寒かった。「ここには衣食住のすべてがある。僧は毎月200〜400人民元(約2500〜5000円)の小遣いを受け取るだけだ。自動車などは集団で所有する。基本的に個人の持ち物はない」
少林寺の創建は495年。言い伝えによると、禅の創始者とされるインド出身の達磨大師は、寺の近くの山中で9年間座禅を続けたという。
今や少林寺周辺には、武術を学ぶ何万人もの若者や僧が暮らす。外国人もいる。7年以上も修行を続けているラスベガス出身のニキ・スリガーはこう話す。
「外国人は憧れを抱いてやって来るけれど、あちこちで数珠が売られている。商売優先の姿勢がますます強くなっている」
少林寺の俗化を心配する声は少なくない。「少林寺は(中国の)誇りだが、悟りが得られる場所ではない」と、米シラキュース大学の中国仏教専門家ガレス・フィッシャーは言う。
09年には、少林寺がIPO(新規株式公開)を準備中という話が流れた。しかし釈は、自分はビジネスマンではないと語り、こう言い切った。「少林寺はただの寺。ブランド化しようと思ったことなどない」
昨年には少林寺北米サミットに出席。ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンを訪れたが、「空の移動はいつもエコノミークラス」だったという。