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ネパールブッダの生誕地でインドと中国が対決
狙いは仏教との深いつながりをテコに地域でのソフトパワーを手に入れること
ブッダは誰のもの ネパールを訪問した中国の温首相 Bikash Dware-Reuters
ネパール南部にある小さな村ルンビニは、ブッダの生誕地とされる仏教の聖地。この村が、中国とインドの覇権争いの新たな台風の目になっている。
両国は今や、仏教関係の会議や文化遺産ツアーを競って開催。その狙いは、仏教との歴史的なつながりをテコに地域での「ソフトパワー」を手に入れることだ。東南アジアの中国系移民の心をつかもうとするインドに対し、中国は仏教に気配りする姿勢を打ち出すことで、チベット自治区での弾圧で傷ついたイメージを修復しようとしている。
中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相は1月中旬、ネパールを訪問。インフラ整備などの予算として1億4000万ドル強を提供すると約束し、ルンビニへの鉄道延長計画への支援も検討すると述べた。
一方、国内に仏教の聖地を多く抱えるインドはこれまでルンビニを「格下」扱いしてきた。ネパール当局が実施するルンビニ観光誘致キャンペーンに「喜んで」協力すると表明しているが、「両国政府が組織した団体の大半は機能不全だ」と、ネパール政府観光局の広報担当者アディチャ・バラルは言う。ソフトパワー獲得への道は険しい。
[2012年2月 1日号掲載]