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シリア砲弾に散った隻眼の女性記者、死の真相
何の自衛手段ももたずにアサド政権の虐殺現場を取材するジャーナリストたちが格好の標的に
志半ば コルビンは長年にわたって紛争地域を取材してきた(2011年6月) Zohra Bensemra-Reuters
シリアで反体制派への血の弾圧が苛烈を極めるなか、西部の都市ホムスでまた悲劇が起きた。政府軍の砲撃で外国人ジャーナリスト2人が死亡。ウエブを通じてホムスの様子を伝えていた地元ジャーナリストも殺害された。
報道によると22日午前、外国人ジャーナリストたちが「メディア・センター」として拠点にしていた建物を、政府軍の迫撃砲が直撃。英サンデー・タイムズ紙のアメリカ人記者マリー・コルビンと、フランス出身のカメラマンのレミ・オシュリクが逃げ遅れた。
反体制派の抗議活動が11カ月目に入ったホムスでは、政府軍による弾圧の実情を取材するため、外国人ジャーナリストたちが逗留していた。
アサド政権が外国メディアの取材を制限しているため、多くの外国人ジャーナリストはシリアへ「不法入国」している。そのため、メディアとして保護を受けられるような手続きや安全措置もとっていない。
先週も、米ニューヨーク・タイムズ紙記者のアンソニー・シャディドが、シリア北部を取材中に喘息の発作で死亡した。適切な治療を受けられる状況ではなかったためだ。
危険を冒して伝える勇気
反体制派の活動家によれば、地元ジャーナリストは安全の保証などゼロに等しく、政府軍の標的にされているという。
ソーシャルメディア「バンブーサー」によれば、政府軍による攻撃のライブ映像をホムスからウェブで配信していた市民ジャーナリスト、ラミ・アフマド・アル・サイードが21日に殺害された。彼が配信した映像はBBCやアルジャジーラでも使われていた。
米民間団体「ジャーナリスト保護委員会」は昨年の特別報告書で、アラブ諸国の反体制活動を取材するジャーナリストの死亡率が高いと指摘している。
コルビンは01年、スリランカで取材中に左目を失明。その後も、コソボやチェチェンで紛争取材を続けてきた。10年には英ガーディアン紙の取材に対し、紛争地域で取材することの危険とその意義について詳細に語っている。
戦争取材とは混乱と破壊、そして死があふれる場所へ行き、その目撃者になること。軍隊や部族、テロリストが戦い、プロパガンダの砂嵐が吹き荒れる中で真相を見つけ出すことだ。もちろん、それには危険が伴う。自分だけでなく、一緒に働く人にも危険が及ぶ。
爆撃によるクレーター、焼け落ちた家々、手足がちぎれた死体、子供や夫を亡くして泣く女性たち、そして妻や母、子供を失った男性たち----。
われわれジャーナリストの使命は、こうした戦争の恐怖を正確に、偏見なく伝えることだ。危険を冒すに値する内容の記事が書けるかどうか、常に自問しなければならない。どこまでが勇気で、どこからが蛮勇なのか、と。