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北朝鮮「金正恩暗殺説」を放置した中国の真意
中国版ツイッターから瞬く間に広がったデマが示唆する中国と北朝鮮との緊張関係
庇護はいつまで 中国は金正恩を好ましく思っていない可能性がある KCNA-Reuters
先週末、北朝鮮の最高指導者となった金正恩(キム・ジョンウン)が北京で暗殺されたという噂がネットを駆け巡り、大騒動になった。
結局、彼は死んでいなかった。事の経緯はこうだ。中国のミニブログ「新浪微博(シンランウェイボー)」で10日の午前2時頃に、正恩が北京の北朝鮮大使館で撃ち殺されたという噂が流れた。これが中国政府に近い香港の報道機関で引用されたため、信憑性が高まった。
噂はツイッターにも飛び火し、ここで一気に広がりを見せる。ロイターやゴシップサイトの「ゴーカー」、ハフィントン・ポスト、それにグローバルポストなど様々な米メディアもこの話を取り上げた。
北朝鮮大使館の周辺に車や警備がいたことも暗殺説に拍車をかけ、噂が独り歩きを始めた。ソーシャルメディア時代の今、どんな流言も一気に拡散する。特に、北朝鮮のような閉鎖社会に関する噂は確認をとることが困難で、事実である可能性も高い。
こうした様々な事情が重なって、正恩は「ツイッターで暗殺された」のだ。
騒ぎが落ち着いた今、何が言えるのだろうか。ハーバード大学のニーマン・ジャーナリズム研究所のジョシュア・ベントン所長は、「報道機関が概ね、この噂を事実として報じなかった点は評価できる」と言う。「報道では『ツイッター上の噂』という形で紹介され、実際にその通りだった」
しかしこの暗殺騒動で最も興味をそそるのは、中国が噂の拡散を放置した点だ。
新浪微博はしばしば中国版ツイッターと言われる。しかし実際には、ジャーナリスト向けの教育研究機関ポインター研究所のレジーナ・マコムズが指摘する通り、「ツイッターのように自由でもないし、開放されてもいない。厳重に管理され、監視された空間だ」。
つまり地政学的な観点から見ると、中国がこの噂を黙認したのは、中国と北朝鮮の関係が必ずしもうまくいっていないことの表れだ。おそらく権力掌握の過程にある正恩の行動が、中国の期待に十分沿うものでなかったのだろう。
北朝鮮関連の情報サイト「シノNKドットコム」の編集者アダム・カスカートは、外交ニュースサイト「ディプロマット」でこう書いている。
すべてが、中国と北朝鮮の非常に緊張した関係を示唆している。中国は金正恩に対して、中国の庇護の下で北朝鮮が軍事独裁の手を緩め、国外からの投資を受け入れることを望んでいる。しかし現状では、正恩はそうした路線を取っていない。
中国は、金正日(キム・ジョンイル)の後継者選びで黙殺された、正恩の兄・正男(ジョンナム)を取り上げた本『父・金正日と私 金正男独占告白』をめぐる報道にも口をはさまなかった。正男とのメール交換やインタビューなどを基に日本の新聞記者が記した同著の中で、正男は金一族の世代継承を公然と批判している。しかし、それについても中国は黙認している。