最新記事

ロシア

アフリカを食い物にするもう一つの大国

国連シリア批判決議案への拒否権行使は、ますます拍車がかかる傍若無人ロシアの一端にすぎない

2012年2月10日(金)17時38分
トリスタン・マコネル

止まらぬ弾圧 シリアのアサド大統領はロシアのラブロフ外相との会談で、反体制派と対話する意向を示したが(ダマスカス、2月7日) SANA-Reuters

 大事なのは自国の利害だけ----最近のロシアは、世界情勢を乱すような利己的な行動が目立つ。

 先週末には国連安全保障理事会で、反体制派への弾圧を続けるシリアのアサド政権に対する批判決議案が採択された。しかし常任理事国のロシアと中国が拒否権を行使したせいで、決議案は否決された。

 ロシアにとってシリアは主要な武器輸出先。11年には武器輸出のおよそ8%(約9億6000万ドル)をシリアが占めている。

 もちろん決議案が可決されても、軍事介入などの実効力はない。しかし今回の否決を受けて、シリア政府は市民や反体制派への攻撃を一層強めている。

 今年始め、南スーダン東部ピボル郡で対立する民族間の大規模な襲撃事件が起きたときも、ロシアは国連の足を引っ張った。ロシアは平和維持活動のため現地にヘリコプター部隊を派遣していたが、情勢悪化で安全が確保できないとして出動を禁止。肝心なときに平和維持部隊を輸送するためのヘリコプターをロシアから調達できず、結局は到着が遅れて襲撃を食い止められなかったという。

 また人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルが9日に発表した報告書によると、スーダンのダルフール紛争で中国とロシアの武器が市民の攻撃に用いられていると知りながら、スーダン政府に武器を売り続けているという。

 来週には安保理でスーダン制裁に関する議論が行われる予定だ。ロシアと中国がどんな姿勢をとるかは明白だろう。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国「秘密警察署」、NY在住の被告が罪認める

ビジネス

LINEヤフー、越境ECのビーノス買収 1株400

ビジネス

再送ソニーG、KADOKAWAの筆頭株主に コンテ

ビジネス

次の利上げへ「もう1ノッチ」、賃上げ・米国動向を注
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 2
    遠距離から超速で標的に到達、ウクライナの新型「ヘルミサイル」ドローンの量産加速
  • 3
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「TOS-1」をウクライナ軍が破壊する劇的瞬間をカメラが捉えた
  • 4
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 5
    「制御不能」な災、黒煙に覆われた空...ロシア石油施…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 9
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 10
    アサドは国民から強奪したカネ2億5000万ドルをロシア…
  • 1
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 10
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中