最新記事
エネルギー債務危機イタリアを襲う寒波とガス不足
大寒波の欧州を悩ますロシアの天然ガス輸出制限が、ガスの90%を輸入に頼るイタリアを直撃
名所も閉鎖 86年以来の本格的な降雪があったローマ Gabriele Forzano-Reuters
1月末から記録的な大寒波に襲われている欧州では、暖房用燃料として天然ガスの需要が急増している。ところが、各国の頼みの綱であるロシアが対欧州輸出を削減。ロシア政府系の天然ガス・石油大手ガスプロムは、寒波の影響で国内でも例年以上に家庭用・産業用ガスの需要が高まっているためとしている。
イタリアのエネルギー会社ENIによれば、ロシアからイタリアへのガス供給量は通常より約20%も減っているという。厳しい寒さのため欧州全土では300人以上の死者が出ているが、イタリアでもこれまでに17人が死亡。異例の積雪があったローマではコロッセオ(円形闘技場)やフォロ・ロマーノなどの観光名所も閉鎖された、とBBCは報じた。
イタリア政府は緊急対策を講じ、これを乗り切ろうとしている。経済発展相は2月6日、産業界へのガス供給を一時的に削減することを発表。対象となるのは、通常は割安なガス料金を払う代わりに、緊急事態が起きたら最初に供給をカットされる契約を結んでいる企業だ。
ロイターによれば、ガス火力発電所の発電量を減らし、その分を埋め合わせるために石油火力発電所をいくつか稼動させる、と政府高官らは述べている。
イタリア政府の計画に対して、産業界からは不満の声が上がる。「まず最初に企業への供給を減らすというのは、納得できない。利用可能な備蓄分の放出を優先すべきではないか」と、エネルギー消費の多い企業300社の協議会「ガスインテンシブ」のパオロ・クリッチ会長は言う。
ロイターは次のように報じている。
イタリアは2010年に約780億立方メートルのガスを消費したが、その90%を輸入に頼っている。約220億立方メートルをロシアから、約250億立方メートルをアルジェリアから輸入している。