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東南アジアビルマの門戸開放に中国の思いは複雑
アメリカと近くなり過ぎるのも困るが、北朝鮮のようなお荷物になられるのはもっと困る
腹の探り合い 中国で会談したテイン・セイン大統領(左)と胡錦濤国家主席(2011年5月) David Gray-Reuters
11月30日からクリントン米国務長官を迎える予定のビルマ(ミャンマー)。この訪問によって、ビルマの唯一の同盟国とも言える中国の立ち位置も変わらざる得ないだろう。
中国では、ビルマに対するアメリカの影響力が強まることを警戒する声がある。その一方で、より開かれたビルマは中国にとっても望ましいとの認識も広がりつつある。
中国にとって望ましくないのは、ビルマが第2の北朝鮮になること──中国に頼り切った閉鎖的な孤立国家になることだ。
「孤立したビルマは不安定なビルマだ」と北京大学の国際経済学者、査道炯(チャー・タオチョン)は言う。「ビルマが国際社会に参加して安定すれば、中国の利益になる」
中国では今、資源の豊かな隣国ビルマとの関係をどう維持するかが盛んに議論されている。ビルマが開放政策に転じ、他の国々との関係構築に乗り出したのは、親分風を吹かす中国に閉口したからだという見方もある。
過去30年間、ビルマにとって中国は主要な同盟国であり、貿易相手だった。しかし、ビルマが昨年秋の総選挙以来、民主化の動きを進めるなかで、「中国離れ」とも取れる政策が目立つようになった。なかでも衝撃的だったのは、中国の後押しでカチン州にできる予定だった世界最大級の水力発電ダムの建設計画が凍結されたことだ。
ビルマは中国企業にとっては格好の投資先で、中国資本による大規模な開発事業がめじろ押しだ。そうしたなか、広大な森林を水没させるダム建設に住民らが激しい抗議の声を上げた。
民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーも反対の意思を表明。テイン・セイン政権もこうした声を無視できなくなった。
中国側は、ダム計画凍結は大きな問題ではないとしている。人民日報系の環球時報は「欧米のメディアはしばしば(ビルマをめぐる)米中の綱引きを大げさに書き立て過ぎる。彼らはダム計画凍結をビルマが欧米ににじり寄った明確なサインと決め付けている」と主張した。
北京大学で国際関係論を教える朱鋒(チュー・フォン)は、ビルマの民主化機運が急激に高まることへの懸念があると指摘する。国境地帯の混乱は中国国内に波及しかねないからだ。
ビルマの民主化に一定のブレーキをかけつつ、自国の経済的権益を確保したい。それが中国の本音のようだ。
[2011年12月 7日号掲載]