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中国政治文革を語った温家宝の狙い
政治改革なしに経済改革はないが持論の改革派首相が中国政治のタブーを破った
党内で力なく 紅衛兵に迫害された祖父や父親の苦しみを語った温 Reuters
中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相が先月末、母校である天津の南開中学でつらい過去を語った。病気になった自分のために父親が時計を質に入れて薬代を工面したこと、身動きできないほど小さな部屋で家族5人が暮らしたこと......。
そして話が文化大革命のくだりに差し掛かると会場は静まり返った。「家族は迫害され続けた」──温は教育者だった祖父と父親が紅衛兵に苦しめられたことを初めて明かした。
これまで文化大革命について口にした中国指導者はほとんどいない。それは政治的タブーだった。温はタブーを破ることで、未来の指導者たちに過去の過ちを繰り返すなと暗に示したのだろう。
小学校の教師だった温の祖父は死ぬまで「自己批判」を強要された。「祖父の学校にはまだ書類が残っている。小さく整った字で書かれた自己批判書が」
文化大革命を語ることがタブーとされるのは、毛沢東の悪いイメージが助長されるからだ。今年8月、習近平(シー・チンピン)国家副主席は訪中したバイデン米副大統領に、文化大革命で家族が苦しんだことを語ったという。しかし会談で習の言葉は完全には通訳されなかった。
今回の温の発言で重要なのは、それが公式の場だったことに加え、中国の一部メディアがそのまま活字にしたことだ。
改革派の温がタブーを破ったのは当然の成り行きだったのかもしれない。温はこの1年、中国共産党による「過度なコントロール」は緩めるべきだと警告。「政治改革なしに経済改革はない」とも発言している。
文化大革命時代に触れたのも、指導層が一新される来年を目前に、党内の強硬派を牽制したのだろう。任期が切れる前に自分の姿勢をより明確にしておきたがっているようだ。
温の発言がたびたび検閲され国民に伝えられないことに同情する者もいる。温は昨年、CNNに「言論の自由は発展する国家に不可欠だ。中国は発展し続けるし、民主主義を求める国民の思いは止まらない」と語ったが、国営メディアは無視した。だがこの発言はネットで広がり、あるネチズンは「首相にさえ言論の自由がない」と嘆いた。
その改革精神から国民の間での人気が高く、親しみを込めて「温じいさん」と呼ばれるほどの人物だが、残念ながら保守派が支配する党内では大きな力を持てないでいる。