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ロシアプーチン、「ソ連復活」の野望と本気度
旧ソ連圏を単一政治経済圏として再統合する超大国構想が、親欧ウクライナの参加で現実味を帯びはじめた
西欧の危機に乗じて 来年ロシア大統領に返り咲いたら次の狙いは「ユーラシア大統領」? RIA Novosti-Reuters
プーチン首相の新構想が物議を醸している。旧ソ連圏を単一経済圏「ユーラシア連合」として再統合し、政治的にも超大国勢力を目指そうというのだ。
プーチンは「東のEU」と称するが、ロシア帝国主義の野望が名前を変えて復活しているという批判もある。いずれにせよ、構想が実現へ向け、急速に前進していることは確かだ。
先月中旬にプーチンは、独立国家共同体(CIS)のうち8カ国が自由貿易圏の条約に署名したと発表。これを第一歩として、「2015年頃からユーラシア連合の創設が実現に向けて動きだすだろう」と語った。
注目は、ウクライナが条約に署名したことだ。最近まで西側の一員になろうと模索していたウクライナがロシア圏に回帰したことは、まさに時代を象徴している。緊迫した財政危機に直面するヨーロッパに対し、豊富な天然資源を武器に繁栄するロシアは、数十年来で最強の指導者の下で安定期に入っている。
プーチンは先月、イズベスチヤ紙に寄稿し、ユーラシア連合はロシア、ベラルーシ、カザフスタンの関税同盟(来年1月に単一経済圏に移行)を中心に形成されると明らかにした。
プーチンはあくまでソビエト連邦の復活ではないと強調。「現代の世界で1つの極になると同時に、ヨーロッパと活力に満ちたアジア太平洋地域の懸け橋になるような、強力な超国家連合を目指す」と記している。
市場主導型の民主主義国が集まるEUと違って、ユーラシア連合は必然的に、超大国ロシアを中心とした権威主義的・中央集権的組織になるだろう。
「ヨーロッパを見れば分かるように、強力な政治的・地政学的価値観の中核がない連合は、危機に直面したら完全に崩壊しかねない」と、ロシア政府に強い影響力を持つとされる極右政治家のアレクサンドル・ドゥーギン会長は言う。
改革派の旗手ボリス・ネムツォフ元第1副首相は、ユーラシア連合の発想自体が「政治的ジョークだ」と嘲笑する。「自由な意思に基づく連合体では、民主主義が不可欠のはずだ。独裁体制にそれができるのか」
「ソ連の再興は西側にとっては恐怖だが、旧ソ連圏では強い支持がある」と、ドゥーギンは言う。旧ソ連圏の世論調査も、大多数の人が超大国の庇護下にいる威信と安心を今も懐かしんでいることを示している。
[2011年11月 9日号掲載]