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イエメンアウラキ暗殺でも脅威はなくならない
オバマ政権はアルカイダ幹部の殺害を自画自賛したが、反米の源泉の絶望はなくならない
扇動者 アウラキは欧米の若いイスラム教徒に過激思想を吹き込んだ Reuters
先週、CIA(米中央情報局)の無人機による攻撃で、イエメンに潜むアルカイダ系のイスラム武装勢力「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の幹部アンワル・アル・アウラキが殺害された。
これで、アメリカにとって危険な男が1人減ったことになる。だがイエメンに安定が訪れるわけではないし、アメリカが今より安全になるわけでもない。
アウラキはニューメキシコ州生まれのアメリカ人。コロラド州立大学に学び、国内のモスクで説教するうちに、どんどん過激になっていった。典型的な「米国産」の聖戦士だ。
04年にイエメンに移ってからも、米国内のイスラム過激派に強い影響を与えてきた。09年にテキサス州の陸軍基地で銃を乱射し、13人を殺したニダル・マリク・ハサンも、昨年5月にニューヨークのタイムズスクエアで爆弾テロを起こそうとした男も、アウラキと接触があった。
アウラキについては、「殺すほどの価値なし」とする意見もあった。アルカイダ系の組織内で特に重要な地位にあるわけではなく、現地イエメンでの知名度も低いからだ。
しかし現地での地位や影響力はさておき、アウラキはアメリカにとって大きな脅威だった。彼は思想的な指導者でもテロ活動の首謀者でもなかったが、欧米の若いイスラム教徒たちに過激思想を吹き込む上では最も雄弁な男の1人だった。
一方には、アウラキ殺害がアメリカへの脅威を増すという議論もある。イエメン人の反米感情が悪化し、アルカイダ工作員に志願する者が増えるだろう、というのが理由だ。だが、その心配はない。アウラキはもともと、イエメンでは無名の存在。もしも自爆テロ志願者が増えるとすれば、理由は別にある。
人口過剰や貧困、部族間の対立、深刻な水不足など、イエメンには若者を絶望させる理由がたくさんある。「アラブの春」の余波でいったんは国外に脱出した独裁者サレハ大統領も、先頃帰国を強行した。国内は依然、一触即発の危機的状況だ。
イエメンの抱える病は慢性的なものだ。アウラキ殺害は、その病から派生した小さな症状を1つ取り除いたにすぎない。米オバマ政権はアウラキ殺害で「アルカイダに大きな打撃」を与えたと自画自賛しているが、イエメンの慢性的な危機が続く限り、絶望が反米に転じる悪循環は断ち切れない。
© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC
[2011年10月12日号掲載]