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中東軍部に乗っ取られた「エジプトの春」
ムバラクを頂点とした軍産複合体で私利を貪ってきた軍部が本気で民政移管に取り組むはずはない
革命はまだ進行中 実権を握った軍部はムバラクと同じ手法で弾圧を繰り返す Reuters
エジプト国民の民衆蜂起によって2月にムバラク政権が倒れた直後、全権を移譲された軍最高評議会は6カ月以内に文民政権に移行すると約束した。「自由な民主国家」へ舵を切るという軍の声明に、革命を成し遂げた民衆は喝采を送ったものだ。
しかし7カ月以上がたった今、状況はほとんど変わっていない。軍部の支配力はますます強固になり、中東一帯に「アラブの春」を呼び起こしたあの革命は実は軍事クーデターだったのではないかと思えるほどだ。
軍最高評議会は先日ようやく、総選挙を11月に行うと発表したが、国に安定と平和をもたらす公平な選挙になるとは誰も思っていない。「軍が権力を文民政府に移譲するなんて期待できない」と、エジプトの専門家であるケント州立大学(オハイオ州)のヨシュア・スタッチャー教授は言う。「彼らは自分たちの私財を維持するために地位を手放さない」
その私財とは、エジプトの指導者たちが数十年かけて育て上げた巨大なビジネス帝国だ。これまでの指導者は全員、軍の出身者。空軍の指揮官だったムバラクは、無数の私企業を保有する軍の企業複合体から利益を得ていた。軍部の投資はエジプト経済のあらゆる分野に及び、その経済帝国の規模は数十億ドルと推定される。
「軍部は決して文民大統領に予算を管理させない」と、スタッチャーは言う。「反体制派を封殺するムバラク流の戦略で、支配を強化しようとしている」
軍最高評議会は最近、ムバラクが弾圧行為を正当化するために30年間敷いていた非常事態令の適用範囲を拡大。さらに今年中は解除しないと発表した。非常事態令が有効な間は、平和的な抗議活動を鎮圧する権限までもが治安機関に与えられる。
結局のところ、現在のエジプトを動かしているのはムバラク政権時代に国を支配していた軍人だ。事実上の国家元首であるタンタウィ軍評議会議長は、ムバラク政権で国防相を務めていた人物。人権保護団体は、最近の独立系メディアに対する弾圧を「ムバラク政権が続いている」証拠だと語る。
反政府勢力の中には、改革が進まない現状に疲労の顔を見せ始めた者もいる。だが熱烈な活動家は諦めない。「浮き沈みがあるのは当然だ」と、人権派弁護士ラギア・オムランは言う。「革命はまだ終わっていない。進行中だ」
[2011年10月12日号掲載]