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中東エジプトが沸いた30年ぶりの自由選挙
国軍に対する抗議デモが続くなか実施された選挙に興奮するエジプト市民、その想いは報われるか
この一票 投票のためなら長蛇の列や数々の不手際も気にならない(28日、カイロ) Ahmed Jadallah-Reuters
今年2月にムバラク政権が崩壊したエジプトで11月28日、各地に長蛇の列ができた。政権崩壊後初のエジプト人民議会選(下院に相当)が始まったのだ(来年1月までに3段階に分けて実施され、上院に当たる諮問評議会の選挙は1〜3月に行われる)。
複数政党が参加する自由で公正な選挙がエジプトで実施されるのは、実に30年以上ぶり。ムバラク後の暫定政権を担う国軍に抗議するデモが相次ぐ中、この日を待ちわびていた市民らは投票所に何時間も並び続けた。
「これまでの選挙では選択肢がなかった」と、初めて投票にやってきたカイロ在住の41歳の男性は語った。「勝てないかもしれないが、少なくとも自分たちの声を届ける機会にはなる」
不正投票や脅迫行為は目立たず
もっとも、すべてが順調とは言いがたい。エジプト国軍による暫定政権は「自由で公正」な選挙を行うと請け合っているが、選挙管理当局に寄せられた違反行為の報告は数百件にのぼる。
例えば、投票は朝8時に全国一斉に始まるはずだったが、多くの有権者が場内に入れず、中には7時間待たされたケースもあった。投票箱がなかったり、投票用紙に必要なスタンプが押されていないなどの不手際も続発。他にも以下のような選挙違反が報告されている。
・投票開始前の48時間はいかなる選挙活動も禁じられているが、多くの政党が投票所の外で支持を訴えた。
・必要書類を持参していたにもかかわらず、治安部隊に投票所の取材を拒否されたジャーナリストが数人いた。
・選挙管理当局の複数の職員が投票所になかなか姿を見せず、予定時間に投票を開始できなかった。
・カイロ市内の投票所に投票箱を届けなかった警官1人が停職処分を受けた。この投票所では、投票開始が10時間遅れた。
・少なくとも1人の立候補者が、選挙違反疑惑をめぐって罵りあいを繰り広げた。
それでも、2010年の議会選でムバラク率いる与党・国民民主党が大勝したときのような大規模な不正投票や脅迫行為はなかったようだ。ムバラク時代には、カイロの市街地で銃声が聞こえるのが当たり前だった。
エジプト国民の大半も、今回の選挙は総じて透明性の高いものだったと楽観的に考えている。「投票所でずいぶん待たされたが、それは想定内だ。これは長い年月で初めての本物の選挙だ」と、カイロ市街地選出の候補者、アイマン・タハは言う。「こんな歴史的な選挙に出馬していることを嬉しく思う」