最新記事
米中関係米上院、対中制裁法案可決の意味
人民元安に苛立つ米議会の動きは中国の報復を招き、貿易戦争の引き金になりかねない
為替操作? 人為的な人民元安は輸出補助金と同じと米議会は考えている Petar Kujundzic-Reuters
中国当局は為替操作による人民元安で中国の輸出を不当に促進し、アメリカの雇用を脅かしている──そんな不満が募るなか、米上院は今週、中国への「制裁法案」を可決した。中国当局は怒りを爆発させており、米中「貿易戦争」の引き金になりかねない。
この法案は、自国通貨の過小評価を誘導している国に対して、米政府が相殺関税などの手段を使って制裁を課すというもの。最大の貿易相手国である中国に対するアメリカの苛立ちが反映されている。
中国政府は直ちに反対を表明し、両国間の「貿易戦争」を引き起こしかねないと警告した。中国政府外交部の劉為民(リウ・ウェイミン)報道官は「法案は世界貿易機関(WTO)のルールに著しく違反している。中米両国の経済、貿易関係を阻害するうえ、アメリカの経済、雇用問題の解決にもつながらない」と語った。
もっとも、実際に法案が成立する見込みは薄い。上院では63対35の賛成多数で可決されたものの、下院では審議の見通しが立っておらず、大統領も署名に慎重な姿勢をみせている。
中国側に歩み寄りの姿勢がまったくみえないわけではない。中央銀行にあたる中国人民銀行は最近、アメリカの人民元切り上げ圧力に応えて、人民元の対ドルレートを上げる為替介入を行っている。
国内産業保護の切り札になるか
法案の賛成派に言わせれば、人民元の為替レートを低く抑制する中国の政策は、中国の輸出産業を利する補助金のような存在だ。今回の法案が実現すれば、国際的な貿易不均衡とアジアとの競争によってシェアを奪われたアメリカの国内産業を保護できるという。一方、反対派はアメリカ企業に対する報復を招き、「貿易戦争」を引き起こしかねないと主張する。
中国外交部の馬朝旭(マ・ジャオシュ)報道官は、この法案を「誰も得をせず、弊害しかない」と非難している。
オバマ大統領も法案に100%賛同はしておらず、「WTOから拒否されかねない『象徴的』な法案を成立させることは望まない」と先週語ったという。