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中東リビアの次は「シリア危機」が勃発?
アサド大統領一家の支配が40年続くシリアで民主化運動が高まるなか、「リビア型」の抑圧的な政府の対応が示す不穏な展望
プロパガンダ ダマスカス市街ではアサド大統領支持派のデモ行進が行われた(3月25日) Thaier al-Sudani-Reuters
アラブ世界を揺さぶる民主化運動の波が、今度はシリアに飛び火している。反政府デモの高まりを受けて、シリア政府は3月23日に政治改革を進める意向を表明したが、デモ隊に対する武力弾圧が続く現状を見る限り、当局の対応はエジプトやチュニジアのような穏健路線ではなく、リビアやバーレーン、イエメンのような抑圧的な道を辿る可能性が高いようにみえる。
25日には治安部隊が各地でデモ隊と衝突し、南部の都市ダルアで数十人が死亡したと報じられている。西部の主要港湾都市ラタキタでも反政府運動が盛り上がっており、当局は治安部隊に加えて軍も投入。すでに少なくとも10人以上のデモ参加者が死亡したという。
メディアへの締め付け緩和を発表したが
民主化運動の高まりを受け、当局は食糧や燃料への補助金や公務員の給与引き上げ、兵役義務の軽減などの懐柔策を発表している。国民の間には、平和的な手段によってデモ隊の怒りを鎮めたいという与党・バース党の姿勢の表れだと期待する声もあったが、先週来の武力弾圧によってそんな望みは打ち砕かれたと、あるシリア人ジャーナリストは語った。
政府の対応は矛盾に満ちている。政治犯を裁判なしで投獄できる非常事態法を解除する方針を固めた一方で、デモ隊を暴力で迎え撃ち、反体制派を逮捕し、衝突が起きた地域へのジャーナリストの進入を拒んでいる。
メディアへの締め付けを緩和する方針も発表されたが、同時に報道の自由を脅かす行為も続いている。実際、シリアにおける報道の自由は極めて限られており、国際比較ランキングでも北朝鮮やビルマ、中国、イランと並んで底辺に位置づけられている。ブサイナ・シャーバン大統領顧問は先週、「真実を伝えているのはシリアのテレビ」だけであり、外国メディアは嘘を報じるのをやめるべきだと語った。
2011年はアラブ現代史の決定的な転換点
治安部隊による武力行使は国民の怒りをあおり、反政府デモの参加者を増やすだけだろうと、首都ダマスカス在住の情報筋は語る。その傾向は既にチュニジアから広がった革命の嵐で証明されている。
にもかかわらず、シリア当局は相変わらずのプロパガンダ戦略を続けている。25日はダマスカス市街でアサド大統領支持派のデモが行われ、車やトラックから身を乗り出した男たちが大統領支持の旗やバナーを振って、「アラーの神とシリアとバシャル(.・アサド大統領)、それがすべてだ」と歌っていた。
アサドは国民の間で人気が高く、支持派のデモに個人的信念に基づいて参加した人もいただろう。しかし一方で、推定100万人といわれる秘密警察のメンバーも多数動員されていた。彼らはわずかな俸給をもらって友人や隣人の動向を当局に報告し、「自発的」な政府支持のデモ行進に定期的に参加する。
一方、ダマスカスの中心部で反体制デモを企画した人々はあっという間に追い払われた。モスクでの金曜礼拝の最中に「自由を!」と叫んだ男性が、即座に車で連れ去られたという目撃情報もある。
シリアでの一連の動きは、アラブ世界で進む大きな地殻変動の一環だ。その広がりは、もはや欧米諸国と親しい国だけにとどまらないようだ。恐怖による支配を続けてきた国はどこも、恐れを感じている。
「2011年はアラブ世界の現代史における決定的な年号の1つになるだろう」と、中東史に詳しいオクスフォード大学のユージン・ローガンは言う。「独裁支配が2011年中に消えることはないが、終わりの始まりではある」