ブッシュ減税の延長は未来への大きなツケ
バラク・オバマ米大統領と共和党指導部は12月6日、年末に期限切れを迎える「ブッシュ減税」について、すべての所得層を対象に2年間延長することで合意した。両者の合意内容にはそのほか、失業保険の給付延長や景気刺激のための減税措置なども含まれている。
今回の合意は多くの面でプラスの効果を生むはずだ。経済の活性化に役立つし、失業率は下がるだろう。オバマを擁する民主党と、中間選挙の勝利で勢いづく共和党のにらみ合いも緩和される。両党は経済成長という共通の目標の実現に向けて折り合いをつけたようだ。
だが大きな問題が1つある。今回の合意では財政赤字を減らせないのだ。
共和党は富裕層への増税には反対だし、民主党は低所得者などに手を差し伸べたい。どちらの願いもかなえるためには何かを犠牲にする必要がある。犠牲にされたのは赤字削減だった。
「景気刺激のために赤字を拡大させる」ことに反対してきた共和党と右派の今までの主張と、今回の合意は矛盾している。だが赤字拡大を懸念する声はあまり上がっていない。本心では財政のことなど気にしていないらしい。
右派は長年、赤字削減より減税のほうが重要だと考えてきた。彼らが今回の合意で不満なのは赤字拡大ではなく、「大きな政府」につながる失業保険の給付延長に反対だからだ。
「国民にカネを払って失業状態を続けさせていたら、就業率に大きなマイナスの影響を与える恐れがある」とケイトー研究所(ワシントン)のダニエル・ミッチェルは言う。「大勢の人が今後も失業状態から抜け出せなければ、彼らの職歴が損なわれ、仕事への考え方に悪影響が及ぶだろう」
左派の一部が今回の合意を批判する主な理由も赤字拡大の懸念ではない。彼らは民主党が政治の主導権を握れないことや、彼らにとっての「正しい」財源の再配分を行えないことが不満なのだ。