スウェーデン人がテロに動じない理由
アフガン派兵が自爆テロの動機と言われるが、真の原因は政治でも宗教でもないことを国民は知っている
あわや大惨事 買い物客でにぎわうテロ現場近くで捜査を行う警察官 Scanpix Sweden-Reuters
先週末に首都ストックホルムで自爆テロが起きたスウェーデン。同国軍のアフガニスタン駐留への反発が、自爆テロ犯の動機とみられているが、週が明けても政府は冷静な対応を保っている。
容疑者はイラク生まれのスウェーデン人、タイムール・アブデルワハブ(28)。彼はガスボンベを積んだ車を繁華街で爆発させる狙いだったが、繁華街に入る前に誤って爆発が起きてしまったようだ。2度目の爆発によって、アブデルワハブの腹部は吹き飛び、歩行者は煙に包まれたという。爆発しなかったパイプ爆弾も彼の死体のそばで見つかった。
爆発の少し前、スウェーデンの報道機関と警察には同国軍のアフガニスタン駐留と、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画を描いた同国の漫画家を非難する内容の電子メールと音声ファイルが届けられていた。
「これは政治的なゲームだ」と、公務員のスザンナ・オリビンは、爆発の翌々日に現場近くを歩きながら語った。「アフガニスタンを理由にしなくても、何か別の理由を作っていたと思う。自分を粉々に吹き飛ばすなんて狂ってる」
スウェーデンは長く国際社会で中立な立場を維持しているが、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)には500人を派兵している。
北欧初の自爆テロにも「驚かない」
IT企業の社長ヨハン・イッターホルム(34)は多くのスウェーデン国民と同じく、アフガニスタンからの撤退を望んでいる。だがそれはスウェーデン国内でのテロの危険性を考えてのことではなく、駐留軍の活動が失敗していると思っているからにすぎない。「テロが起きたのは、それほど驚きではない」と、イッターホルムは言う。「大都市では定期的に起きるものだ」
スウェーデン国立防衛大学のテロ専門家マグナス・ランストルプは、もはやスウェーデンもテロの脅威から免れられないと考えている。だがそれでも、テロによってアフガニスタン駐留の支持者が考えを変えることはないだろうと言う。「逆効果かもしれない。(駐留への)支持が強まる可能性もある」
ほかの欧州諸国は既に、アメリカが主導するアフガニスタンでの戦闘から撤退または見直しを図っている。国内外からの圧力によってアメリカ自身も、戦略の見直しを迫られている。オバマ政権は2014年までに全部隊を撤退させると表明した。
これまでスウェーデンでテロが起きたことはほとんどない。しかし今年、ソマリアのイスラム武装勢力アルシャバブとの関わりがあるとしてソマリア出身のスウェーデン人の若者2人が逮捕された事件は、大きく報道されて国家の安全保障が転機を迎えているという議論が盛り上がった。同国のフォーカス誌は最近、治安当局が移民コミュニティーにおけるテロ組織の勧誘活動に一層の警戒を払っていると報じた。
「今回の爆破事件によって、人々の移民に対する目が変わらないよう願う」と、コートジボワール系移民の学生エリック・ローブルは言う。