北朝鮮を見捨てない中国の真の思惑
南北統一を阻止したい中国は、北朝鮮を「衛星国家」にして体制を存続させる道を選択した
「血の友情」再び 5月に北京で会談した北朝鮮の金正日総書記(左)と中国の胡錦濤・国家主席 KCNA-Reuters
そんなことあるか! のっけから乱暴な言葉で恐縮だが、これくらい強い表現を使わずにはいられない。北朝鮮情勢に関して評論家や政府関係者たちが相も変らぬ主張を垂れ流しているが、まったく同意できない。
11月23日に北朝鮮軍が韓国の延坪島を砲撃したことを受けて、米国務省のP・J・クラウリー報道官はこう述べた。「第1に、北朝鮮の挑発行為により生み出された緊張を和らげ、第2に、北朝鮮に核放棄を促し続けるために、中国が影響力を行使することを願う」
願うのは自由だが、中国がアメリカの期待に応じることはありえない。中国外務省は先頃、「(国際社会と)一致して行動する用意がある」と述べた。しかし中国政府の言葉を額面どおりに受け止めると、たいてい当てが外れる。
「唇と歯」が友情を再確認?
最近、中国と北朝鮮の親密ぶりが目立っている。両国の間には、朝鮮戦争を共に戦った経験を通じて築かれた強固な「血の友情」があり、「唇と歯」のように親密な間柄だと言われてきた。ここにきて、そうした古いレトリックがまたしきりに聞こえ始めた。
8月には、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が中国北東部を訪問。そこへ中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が北京から出向いて、会談を行った。金の後継者としてお披露目を間近に控えた3男の金正恩(キム・ジョンウン)も同行していた。このとき、中国は金正恩が北朝鮮の次期指導者になることを了承した。
それから1カ月あまり経った10月10日、平壌で朝鮮労働党創建65周年を祝う軍事パレードが行われた。メディアは金正日や北朝鮮高官たちと共に演壇に立つ金正恩に注目したが、このとき金正日の隣に「金日成バッジ」を着けていない男性がいた。中国共産党の周永康(チョウ・ヨンカン)政治局常務委員だ。
この翌週、北朝鮮の11の地方行政区画の党責任者が揃って中国を訪問。北京では、周がこの使節団を歓迎した。
北朝鮮側が最も印象的な行動を取ったのは、10月26日。金正日と正恩は党と軍の幹部を引き連れて、平壌の東に位置する檜倉郡という土地を訪れた。ここは、朝鮮戦争に参戦した中国人民志願軍が司令部を置いていた場所。彼らはその戦死者の墓を参拝したのだ。毛沢東の長男・毛岸英もここに埋葬されている。
よその国に感謝の気持ちを示すことなどほとんどない北朝鮮としては、極めて異例の行動と言っていい。金親子にとって、頼れる国はもはや中国だけなのだ。