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テクノロジー中国政府ネット進出の落とし穴
グーグル撤退後、ネットを自分たち好みに作り変えようとする試みを加速させているが
グーグルの撤退後、中国の検索エンジン市場の門戸は国内企業に大きく開かれた。国内最大手の「百度(バイドゥ)」のシェアは73%に達し、電子商取引大手アリババはマイクロソフトと検索サイトのベータ版を共同開発している。
驚くべきことに、国営メディアの人民日報と新華社通信も参入。6月には人民日報系の検索エンジン「人民捜索」が運用を開始。8月には新華社が携帯電話最大手の中国移動通信(チャイナ・モバイル)と手を組んで独自の検索エンジン開発に乗り出すと発表した。
国有企業が狙うオンラインビジネスは検索サイトだけではない。国家郵政局の下部組織は豊かな江蘇省向けに、一般消費者を対象とする電子商取引サービスのサイトを設立した。
人民ミニブログはいかが
10月には国家測絵局が地図サイト「天地図」のベータ版を運用開始。さらに地方でミニブログ人気が高まるなか、人民日報は政府当局者のツイートが売りの「人民ミニブログ」の最新版を発表した。国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)も、オンラインでの動画サービスと番組放送に進出している。
中国政府は気付いたようだ。社会にはネットが浸透しており、サイトの閉鎖や検閲は政府が「その代わり」を用意してこそ最も効果的だということを。とはいえ、こうした政府系サイトの需要があるかを判断するのは時期尚早だし、そのシェアもまだ微々たるものだ。
だが政府にすれば、少なくともこうしたサイトには(当局からみた)正統性と信頼性という強みがある。天地図は、日本との領有権争いの渦中にある尖閣諸島を「中国の領土」と表記。インド北東部アルナチャルプラデシュ州も中国領になっている。
とはいえ弱肉強食のネット世界では、国有企業も万能ではない。人民ミニブログは発足後すぐにハッキングされ、数カ月のサービス停止を余儀なくされた。
時代を後追いするように開設された政府系サイトは今後、自分たちのルールを国民に押し付ける以前に、ネット世界のルールを学ぶ必要があることを思い知らされることだろう。
[2010年11月24日号掲載]