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中南米ブラジル経済を脅かす年金の時限爆弾
高齢化が超スピードで進み、社会福祉費はヨーロッパの高齢国並み。ルセフ次期大統領は社会保障改革に消極的だが、年金が成長の足かせになる恐れも
負の遺産 ルセフ次期大統領はルラ(右)の政権から好調な経済だけでなく、ゆがんだ社会保障制度も引き継ぐことになる Michel Euler-Pool-Reuters
来年1月1日に就任するブラジルの次期大統領ジルマ・ルセフは早速、大胆な政策を掲げている。貧困撲滅、緊縮財政、報道の自由の保護などは野党も納得するところだ。反対に、誰もが神経をとがらせているのは、ルセフが「やるつもりはない」と公言していること──社会保障改革だ。
何しろブラジルの社会保障制度は世界で最もゆがんでいる。ブラジルはとりわけ若年層の多い「若い国」のはずなのに、社会福祉費はGDPの11%を占める。これはヨーロッパの高齢国に匹敵する割合だ。
しかもブラジルの高齢化は、20世紀のヨーロッパの2倍の速さで進んでいる。民間の年金制度への公金による支援はGDP比で7%以上。30年前は2・5%だった。
経済が再び成長に転じている今は、社会保障の赤字が膨らんでも何とかなりそうに思える。しかし世界経済の牽引役としての可能性を最大限に発揮するには、年金という爆弾を抱え続けるわけにはいかない。
社会保障改革に消極的なルセフは、ブラジルの定年年齢が平均53歳と若いことは十分承知しているはずだ。定年を60歳から62歳に延長する年金制度改革法が10月に成立したフランスで、成立前から激しい抗議デモが繰り広げられた、ということも。
[2010年11月24日号掲載]