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北朝鮮金ジョンウンは鄧小平になれるか
金正日総書記から朝鮮人民軍大将の称号を受けた若き三男は、改革開放路線に舵を切ることを期待されているが──
次の将軍 ジョンウンが後継者として北朝鮮を率いる日も近い? Jo Yong-Hak-Reuters
北朝鮮で9月28日、朝鮮労働党の党代表者会が開会した。これに先立ち、金正日総書記が三男ジョンウンに「朝鮮人民軍大将」の称号を与えたため、ジョンウンが後継者に選ばれるとの憶測がさらに高まっている。
ただ、この若い三男には少し同情を禁じえない。まだ20歳代で能力が未知数である金ジョンウンは、新たな世代の金王朝支配がスタートすることを支持するよう人民を説得しなければならない。
十数年にわたる経済的な低迷に耐えてきた北朝鮮人民の間には、北朝鮮版の「鄧小平」(中国を市場経済化した指導者)の下で新たなスタートを切る必要があると考える人が増えている。
最近の大きな失政として、昨年秋のデノミ(通貨呼称単位の変更)が挙げられる。増加傾向にあった自由市場的な交易をする人たちの財産を没収したことで、人民から大きな怒りを買った。政府は謝罪をするだけでなく、切り下げに関わった高官を処刑する必要に迫られた、と報じられている。
主体思想の継続なら不満が強まる
この出来事で、人民の不満に対して迅速かつ効果的な対応をしたり、体制崩壊につながる悪循環に陥らないようにしたりするプレッシャーが政府に対してさらに強まった。新政権が金正日の反資本主義、反グローバリゼーション、そして「主体(チュチェ)思想」の経済政策を継続することを選べば、人民の不満は再び強まる可能性がある。
「さらなる失政と政策変更があるだろう──世界中の情報機関は今後、さらに情勢を注視しなければならない」と、北朝鮮政府の崩壊シナリオをまとめ、最近まで米韓軍司令部のアドバイザーを務めたロバート・コリンズは言う。
8月末に観光客として北朝鮮を訪れたある韓国系アメリカ人女性によると、現政権の支配が終了すれば、後継体制を選ぶための「選挙」に金ジョンウンが出馬すると、平壌在住のガイドから言われたと言う。「ガイドは、ジョンウンが金正日の息子であることには触れずに話した。私が金ジョンウンは誰なのかと聞いたところ、彼は『金ジョンウンはとても頭脳明晰で、まるで父である金正日のようだ』と言った」
一部報道によると、金ジョンウンと次男の二人は、将来の指導者になるために不可欠とされている5年間の特別な政治軍事課程を修了している。
もう1人のキーマン張成沢
まだ見えてこないのは、若きジョンウンが鄧小平のように経済の「改革解放」に舵を切るかどうかだ。毛沢東とは血縁関係の無い鄧小平は、改革開放を進めるまでに過激な反資本主義者だった毛が「死ぬ」のを待たなければならなかった。
最近、軍部と治安組織、そして党で権力のある地位に就いた金総書記の義弟でジョンウンの叔父に当たる張成沢(チャン・ソンテク)に対して淡い期待を寄せる人たちもいる。政権の要職についている張は、経験の浅い後継者を守り、指導する役割を担うかもしれない。確かに、張には国際貿易などそれなりのビジネス経験があり、中国高官らとも良好な関係を築いているとの評判がある。
ただ、残念ながら張には利己主義と汚職の実績もあり、現体制でかなりの利益を享受している。また、人民の生活を真剣に改善するための劇的な政策変更にあまり賛同していないようだ。つまり、ジョンウンも張も、鄧小平のような存在にはなれない可能性が高い。
(GlobalPost.com特約)