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フランスブルカ禁止でテロの脅威に怯えるパリ
イスラム過激派組織による相次ぐフランス人誘拐に加え、国内がテロ攻撃の標的になる危険が高まっている
厳戒態勢 エッフェル塔の下をパトロールする警官と兵士(9月16日、パリ) Charles Platiau-Reuters
今年7月、ニジェールで誘拐された78歳のフランス人男性が殺害され、即座に過激派テロ組織との戦争を宣言したフランスだが、ここにきて国内でのテロの脅威が深刻化している。
敵は、北アフリカに拠点を置くアルカイダ系の過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」。7月以降もフランス人の誘拐は続いており、ブルカ(イスラム教の女性が顔や全身を覆うベール)禁止をめぐって既に緊張が高まっていたパリでは、警戒レベルが引き上げられた。
AQIMは94年のエールフランス機乗っ取り事件など、フランスを標的にした攻撃で知られたアルジェリア系の武装イスラム集団(GIA)から発展した組織。アルカイダ系の組織に「進化」した今も、フランスを狙う傾向は変わらないようだ。
7月の人質殺害事件に続き、9月16日にはニジェール北部でフランスの民間人5人が誘拐された。AP通信の報道によると、およそ80人のフランス軍兵士が捜索のためニジェールに送られ、「フランス海軍の赤外線探知機搭載の長距離航空機も投入された」という。
一方、フランス国内では国会でのブルカ禁止法案の採択をめぐり緊張が高まった。7月に下院を通過したこの法案は、9月14日に上院でも可決された。イスラム女性には6カ月間の猶予期間が与えられるが、その後はブルカを着用すると罰金や禁固刑が科される。
エッフェル塔でも爆弾騒ぎ
法案可決を受けて、フランスの諜報機関である中央対内情報局のベルナール・スクアルシニ局長は、テロ攻撃の「赤信号が点滅している」と警告。「アフガニスタンでのフランスの役割、外交政策、ブルカ禁止法案をめぐる議論――すべてがリスクを高める要因だ」と語った。
諜報機関の活動によって、年平均で2回程度の大規模な攻撃を未然に防いでいるが、「いつかは実害をこうむるだろう」とスクアルシニは警告している。
9月14日には、エッフェル塔に爆弾を仕掛けたという匿名電話があり、一帯が封鎖される騒ぎになったが、後に虚偽の情報だったことが判明。この一件を受け、ブリス・オルトフー仏内相も警戒の声をあげた。「ここ数日、あるいはここ数時間で次々と発生した出来事は、テロの脅威が非常に大きいことを示している」と、記者会見で語った。
それから1週間も経たないうちに、オルトフーが旅行の予定をキャンセルしたことが報じられた。アルジェリア出身の女性が、パリの公共交通機関を標的にした自爆テロを計画しているとの警告があったからだという。フランスの地下鉄が最後にテロ攻撃にあったのは95年で、他ならないAQIMの前身組織だったGIAによる犯行だった。この事件で80人が死亡した。
イギリスのデイリー・メール紙の報道によれば、警察部隊は主要な道路や駅、空港などでの職務質問を強化しているという。ベテラン政治家に加え、「穏健派イスラム指導者」と呼ばれるダリル・ブバクルには銃を携帯した護衛がつけられている。
AQIMによる具体的なテロ予告はまだない。しかし彼らは、ある過激派のウェブサイトに次のようなメッセージを記している。「わが娘たち、わが姉妹たちの尊厳のため、われわれはあらゆる手段を駆使してすさまじい復讐をフランスに仕掛ける」。