最新記事

イラン

石打ち刑の女性が夫殺しを「自白」

拷問で強要されたかもしれない国営テレビでの自白で、処刑はますます濃厚に

2010年8月16日(月)16時41分
ラビ・ソマイヤ

ベルリンで石打ち死刑に反対する女性(8月5日)

 真偽の疑わしい姦通罪で石打ちによる死刑を言い渡され、執行が猶予されていたイランの女性が8月11日の夜、国営テレビに出演した。彼女は夫殺害に関与したと「自白」したが、テレビに出る前に拷問を受けたという報道もある。

 2児の母であるサキネ・モハマディ・アシュティアニ(43)は、夫を亡くした後の「違法行為」(姦通)で05年に有罪となり、石打ちによる死刑が決まった。しかし拘束中の自白を撤回し、すべての罪状を否認した。彼女の弁護士は石打ち刑に対する国際的な非難を呼び起こすキャンペーンを開始し、当局が執行を猶予していた。

 国際的な関心の高まりに当惑したイラン政府は弁護士を尋問。弁護士がトルコ経由でノルウェーに脱出すると、帰国を促すために弁護士の妻や身内を拘束した。

 アシュティアニは番組への出演を強要されたらしい。彼女の別の弁護士によると、「出演を承諾するまで(2日間にわたって)激しくたたかれたり拷問されたりした」。

 番組にはアシュティアニと名乗る女性が顔を隠して出演。英BBCによると彼女は、夫のいとこが夫を殺害する計画を事前に知っていたと話したという。「彼は夫を感電死させた。殺害前には、子供を祖母の家に預けておくよう言われた」と彼女は語った。裁判官も出演し、殺害前に彼女が睡眠薬を夫に注射したと語っている。

 番組はこの事件に関する「西側の政治宣伝」を非難。世界各国の政府や人権団体の非難にもかかわらず、アシュティアニが直ちに処刑される恐れが高まっている。

[2010年8月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中