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カンボジア

ポル・ポト虐殺裁判が司法を変える?

2010年8月5日(木)15時38分
クランシー・マクギリガン(プノンペン)

法と正義 旧政権幹部への判決は大きな前進だが(7月26日、プノンペン) Chor Sokunthea-Reuters

 カンボジアで7月26日、旧ポル・ポト政権下の大量虐殺で殺人や拷問の罪に問われていた元政治犯収容所所長カン・ケ・イウの特別法廷が開かれた。判決は禁固35年が言い渡されたが、これまでの未決拘置期間も算入し、刑期は実質的には禁固19年となる。

 カン・ケ・イウが所長を務めた収容所では、1万2000人が処刑されたとされる。来年は最高幹部4人の裁判が予定されている。

 ポル・ポト政権幹部を初めて裁いたこの国連支援の特別法廷は、混迷を極めるカンボジアの司法制度の今後のモデルになるだろうと期待が高まっている。「今回、刑期が実質的に短縮されたことは、国内のほかの法廷でも人権重視の良い例となるだろう」と、カンボジアの人権団体は評価している。

 そもそもカンボジアの裁判制度は機能不全で、基本的な人権や社会規範さえおぼつかないと批判されてきた。民間団体の6月の調査によると、対象となった800の裁判のうち3分の1が被告不在のまま判決を言い渡し、90%以上の裁判が30分以内で結審したという。また、最近の米国務省の年次報告書は、「政権が裁判に介入し、判事、検察、法務職員の間に汚職が蔓延している」と指摘している。

 政権の影響を受けない特別法廷で、国内の法務関係者が外国人と共に経験を積むことは、司法制度の改善につながる。だが、効果を疑問視する声もある。特別法廷が国内の裁判よりはるかに潤沢な資金で運営されているからだ。民間団体カンボジア弁護人プロジェクトのソク・サム・オウン代表は、特別法廷と国内の裁判は「まったく別物だ」と言う。

 カンボジアの司法制度が独立性を欠いている以上、特別法廷をモデルに国内の司法制度を改善できるかは政治指導者、特に首相の政治的意思に懸かっていると、ソク・サム・オウンは指摘している。

GlobalPost.com特約)

[2010年8月11日号掲載]

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