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キューバ政治犯釈放に応じたカストロの狙い
7月7日、キューバ政府は数十年間の強硬路線から大きく舵を切り、03年に一斉拘束した反体制派52人を釈放すると発表した。
一見すると、ラウル・カストロ国家評議会議長が国内外の圧力に屈したかのように思える。キューバでは反体制派ジャーナリストのギジェルモ・ファリーニャスが政治犯の釈放を求めて4カ月半ハンストを続け、カトリック教会が仲介に乗り出していた。
だが最大の懸念だった人権問題を解決したことで、カストロは利益を得た。アメリカとヨーロッパ諸国を「仲間割れ」させることに成功したのだ。仲介役を果たしたスペインのモラティノス外相は、アメリカの対立的な手法ではなくヨーロッパ式の交渉が奏効したと自画自賛している。
ただ釈放はあくまで象徴的なものにすぎない。キューバは今も反体制派の拘束を続け、大衆を操作して反対運動を抑圧している。
次は、これまでキューバとの関係を悪化させる一方だった米政府が行動を起こす番だ。クリントン国務長官は「遅きに失したが歓迎すべき交渉結果」と発言した。カストロは52枚のカードを切った。ゲームに負けたくなければ、オバマ政権は貿易拡大や大使派遣などの柔軟姿勢で応じるべきだろう。
[2010年7月21日号掲載]